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■引用原文(日本語訳)
不殺生、真実、怒らぬこと、捨離、寂静、中傷しないこと、生類に対する憐愍、貪欲でないこと、温和、廉恥、落着き。
(『バガヴァッド・ギーター』第16章 第2節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 不殺生(アヒンサー):命を尊び、いかなる存在にも危害を加えない。
- 真実(サティヤ):言葉・心・行いにおいて嘘偽りなく誠実であること。
- 怒らぬこと(アクローダ):怒りを抑え、平静を保つ。
- 捨離(テャーガ):執着を手放すこと。
- 寂静(シャーンティ):内面的な静けさと平和。
- 中傷しないこと(アパイシャナム):他人を悪く言わず、誹謗中傷しない。
- 憐愍(ダヤー):あらゆる生命に対する思いやりと同情。
- 貪欲でないこと(アローバ):欲張らず、必要以上を求めない。
- 温和(マールドワ):柔らかく穏やかな態度。
- 廉恥(ヒーリ):道徳的な恥を知る心。
- 落着き(アチャーパラマ):動揺せず、冷静に物事に対処する安定した精神。
■用語解説
- 不殺生(アヒンサー):非暴力。心・言葉・行為で誰かを傷つけないこと。
- 捨離(テャーガ):物・名声・結果などへの執着を断ち切る態度。
- 憐愍(ダヤー):思いやり。特に弱者や苦しむ者への感受性。
- 廉恥(ヒーリ):自分の行いに対して恥を感じる良識。
- 落着き(アチャーパラマ):思考・感情・態度が安定していること。
■全体の現代語訳(まとめ)
バガヴァーン・クリシュナは、人間が備えるべき高貴な性質として、「暴力を行わず、誠実で、穏やかであること」「他者への思いやりを持ち、欲望を控え、誹謗中傷しないこと」などを列挙している。
これらは単なる美徳ではなく、魂の成熟を示すしるしであり、解脱への土台でもある。
■解釈と現代的意義
この節は「他者への関わり方」「内面の調和」「社会的行動のあり方」の基本指針を示している。暴力や怒り、貪欲や中傷といった破壊的な傾向を超えて、「静けさ」「誠実」「慈しみ」といった価値を育むことが、個人の成長と社会の調和を両立させる鍵となる。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | ビジネスへの応用 |
---|---|
コンフリクト対応 | 怒りを抑え、誠実かつ穏やかな態度で対話することで、対立を建設的に解決できる。 |
チームの信頼 | 中傷せず、裏表のない言動は、健全な職場文化と信頼関係を築く。 |
倫理的判断 | 貪欲ではなく、正しく得る・正しく使うことを意識することで、企業の持続性が高まる。 |
リーダーの資質 | 動揺せず、内面的な落ち着きと責任感をもって行動するリーダーは、組織の安心感となる。 |
■心得まとめ
「穏やかで誠実な人が、最も強い」
暴力・怒り・中傷――これらは一見、力強さに見えるが、真の強さとは「害さず・惑わず・正直であること」にある。
私たちの行動一つ一つが、周囲の環境を作る。「静けさと優しさ」は、最も深い影響力を持つ生き方である。
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