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礼儀の形より、心の根本を忘れない

子夏は、人の行いにおける**「大小の徳」の優先順位**について語った。
根本となる大きな徳――誠実さや正義感、他者への敬意など――を踏み外さなければ、
細かな礼儀作法や形式に多少の出入り(乱れ)があっても、大きな問題にはならない
、というのである。

服装の乱れや形式の細かい違いにこだわるあまり、
本来の目的や人への思いやりを忘れてしまっては本末転倒。
君子とは、形式よりも本質を重んじる者である。


原文と読み下し

子夏曰(い)わく、大徳(だいとく)、閑(かん)を踰(こ)えざれば、小徳(しょうとく)は出入(しゅつにゅう)すとも可(か)なり。


意味と注釈

  • 大徳(だいとく)
     人間としての根幹に関わる徳。例:忠、信、仁、義など。人格の土台となる価値観や倫理。
  • 閑(かん)
     法や規律、あるいは節度。ここでは「越えてはならない一線」と解される。
  • 踰えざれば
     その節度を越えない限り、という意味。つまり、重大な過ちでなければ問題ないという寛容の姿勢。
  • 小徳(しょうとく)
     日常の礼儀や応対、服装、形式的なマナーなど。社会的には大切でも、根本的な徳に比べれば副次的なもの。
  • 出入すとも可なり
     多少の違いや乱れがあってもよい、という柔軟な考え方。

1. 原文

子夏曰、大德不踰閑、小德出入可也。


2. 書き下し文

子夏(しか)曰(いわ)く、大徳(だいとく)、閑(かん)を踰(こ)えざれば、小徳(しょうとく)は出入(しゅつにゅう)すとも可(か)なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 子夏曰く、大徳、閑を踰えざれば…
     → 子夏は言った。「大きな徳(根本となる徳目)が規範を越えないかぎり、」
  • 小徳は出入すとも可なり。
     → 小さな徳(些細な道徳的欠点)が多少出たり入ったりしても問題はない。」

4. 用語解説

  • 子夏(しか):孔子の高弟。理論的・道徳的な視点からの発言が多い。
  • 大徳(だいとく):根本的で重大な徳目。たとえば「仁」「義」「礼」など、人格の中心にあるべき徳。
  • 小徳(しょうとく):細かな徳、マナーや日常の細事に関わる徳。例:言葉遣い、態度、習慣など。
  • 閑(かん):区切り、分際、秩序、規範。人として越えてはならない一線。
  • 踰える(こえる):越えてしまう、逸脱する。
  • 出入(しゅつにゅう):出たり入ったりすること、変動や揺らぎ。ここでは「些細なブレ」や「小さな過ち」の意味。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

子夏はこう言った:
「人として守るべき根本的な徳がきちんと保たれているならば、
小さな徳の揺らぎや過ちがあっても、それは許容されるべきである。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**“徳の優先順位”と“人間的な寛容”**について語っています。

  • 大切なのは本質的な徳を守ること。
  • 小さなミスや欠点に目くじらを立てすぎて、大局を見失ってはいけない。
  • 完全無欠を求めるより、「根本は外さない」という姿勢が重視される。

これは道徳の「硬直化」や「過剰な形式主義」を戒め、柔軟さと寛容さを持った倫理観を示した名言です。


7. ビジネスにおける解釈と適用

✅「本質を守れば、小さなズレは許容される」

たとえば、経営理念・行動規範といった大徳を外さなければ、多少の言葉遣いや個性、形式の違い(小徳)は許容範囲。

✅「重箱の隅をつつかず、信念と原則を見よ」

社員教育・評価・チーム運営において、小さな欠点に厳しすぎるとチームが萎縮する。
“理念に忠実か”“誠実に努力しているか”という大徳の視点で判断することが重要。

✅「ミスは“出入”のうち──是正すべきは逸脱」

過度な厳格主義ではなく、一線を越えるかどうかにこそ注目すべき。
信頼を築くのは“完璧さ”ではなく、“根本を守る誠実さ”。


8. ビジネス用の心得タイトル

「守るべきは“道の骨格”──小事に惑わず、本質を貫け」
– 小さなミスを責めるな。人を測るのは、志の大きさと、根本の徳を外さぬ姿勢である。


この章句は、「柔軟な倫理観」と「寛容な人間観」を併せ持った名言であり、現代のマネジメント・教育・人間関係にも強く響きます。


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