MENU

自分の道を貫きながらも、柔軟に生きる知恵を持て

時代が安定している「治世(ちせい)」には、
正義や原則を明確にして、揺るがぬ信念で生きるのがふさわしい。
しかし、混乱した「乱世(らんせい)」においては、
無理に筋を通そうとせず、状況に応じて柔らかく身を処することも大切だ。

そして、現代のような“末世”――
価値観が混沌とし、何が正しく何が間違っているのかも曖昧な時代には、
「方(かた)=信念」と「円(まる)=柔軟さ」その両方を使い分けて、
臨機応変に対応していく知恵としなやかさが求められる。

また、人との接し方についても同じである。
善人には思いやりと寛容をもって接し、
悪人にはしっかりとした厳しさで対応すべき。
そして多くの一般の人々には、
時には寛大に、時には厳格に――
その人の状況や性質を見極めながら、バランスよく接することが大切だ。


「治世(ちせい)に処(しょ)しては宜(よろ)しく方(ほう)なるべく、
乱世(らんせい)に処しては宜しく円(えん)なるべく、
叔季(しゅくき)の世に処しては、当に方円(ほうえん)並(なら)び用(もち)うべし。
善人(ぜんにん)を待(ま)つには宜しく寛(かん)なるべく、
悪人(あくにん)を待つには宜しく厳(げん)なるべく、
庸衆(ようしゅう)の人を待つには、当に寛厳(かんげん)互(たが)いに存(そん)すべし。」


注釈:

  • 方(ほう)…原則を守る、正義を貫く、角が立っても筋を通す態度。
  • 円(えん)…角を立てず、柔らかく融通の利く態度。対人関係・社会の変化に応じた処し方。
  • 叔季(しゅくき)…末世。混乱の時代や価値観が崩れている現代を指す。
  • 寛厳(かんげん)…寛容と厳しさ。両方を場面に応じて適切に用いること。
目次

1. 原文

處治世宜方、處亂世宜圓、處叔季之世當方圓並用。
待善人宜寬、待惡人宜嚴、待庸衆之人當寬嚴互存。


2. 書き下し文

治世に処しては宜しく方なるべく、乱世に処しては宜しく円なるべし。
叔季の世に処しては、当に方円並び用うべし。
善人を待つには宜しく寛なるべく、悪人を待つには宜しく厳なるべし。
庸衆の人を待つには、当に寛厳互いに存すべし。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「治世に処しては宜しく方なるべく」
     → 世の中が安定しているときは、まっすぐで筋の通った態度がふさわしい。
  • 「乱世に処しては宜しく円なるべし」
     → 世が乱れているときは、柔軟で融通の利く姿勢が必要である。
  • 「叔季の世に処しては、当に方円並び用うべし」
     → 時代が末期(道が廃れた乱れた時代)には、正しさと柔軟さの両方を使い分けるべきである。
  • 「善人を待つには宜しく寛なるべく」
     → 徳ある人には寛大に接するべきである。
  • 「悪人を待つには宜しく厳なるべし」
     → 悪意を持つ人には厳しく対応すべきである。
  • 「庸衆の人を待つには、当に寛厳互いに存すべし」
     → 平凡な多数の人々には、寛容さと厳しさをバランスよく使い分けて接するべきである。

4. 用語解説

  • 方(ほう):方正。まっすぐで正しい姿勢。道理に従った厳格な態度。
  • 円(えん):円融。柔軟で適応力のある態度。角がなく融通が利くこと。
  • 叔季(しゅくき):時代の末期。道徳が衰え、社会が乱れている時代。
  • 庸衆(ようしゅう):平凡な人々。善人でも悪人でもない、普通の民衆や一般人。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

世の中が安定しているときは、筋を通した厳格な姿勢が適しており、
逆に世の中が混乱しているときは、柔軟で融通の利く態度が求められる。
時代が乱れて正道が廃れたような末期には、その両方を使い分ける知恵が必要である。

また、善人には寛容に接し、悪人には厳格に対応しなければならない。
そして、多くの普通の人々には、寛大さと厳しさの両面をバランスよくもって対応すべきである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、時代や相手に応じて“原則”と“柔軟さ”を使い分けることの重要性を説いています。

古来より、理想主義だけでも現実は動かず、迎合主義だけでも信頼を失います。
まっすぐな正義感と、しなやかな適応力──その両立が、変化の激しい時代を生き抜く鍵となります。

また、人物によって態度を変えるというのではなく、“相応の接し方”こそが思いやりと智慧であるという、
非常に実践的な倫理観が語られています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 組織運営には“原則”と“柔軟”の両立が必要

市場が安定しているときは、コンプライアンスや手続き重視(=方)が有効。
変革期や非常時には、柔軟で迅速な対応(=円)が求められる。
特に現代のVUCA時代は、方円並用の知恵が不可欠。

● 人材マネジメントは“個別最適”が鍵

善人(高い倫理性・意欲を持つ人)には信頼と裁量を与える(寛)
悪意ある行動にはルールと厳正な対応を示す(厳)
普通の社員には“期待とフォロー”、“自律と管理”のバランスを保つ(寛厳併用)

● リーダーは“状況に応じた態度の切り替え”が必要

正しさに固執すれば孤立し、迎合すれば組織が崩れる。
「時を見る力」と「対応を使い分ける柔軟さ」こそがリーダーの力量。


8. ビジネス用の心得タイトル

「時と人に応じて変化せよ──“正しさ”と“しなやかさ”の両輪が道を開く」


この章句は、「固定化された正しさ」ではなく、「応変の知恵」こそが社会にも組織にも不可欠であることを説いています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次