価格帯と収益性の関係
G社は、社員数の少ない小規模な道路工事業者でした。しかし業績は低迷し、赤字が積み重なる一方で、経営の行き詰まりが見え始めていました。売上物件をリスト化して分析したところ、案件の価格帯が500万円以下の小型物件から5000万円を超える大型物件まで、非常に幅広いことが判明しました。この価格のバラツキが、収益性の低下と業績不振の主要な原因である可能性が浮かび上がったのです。
粗利益率の実態
価格帯ごとに案件の粗利益と粗利益率を計算してみると、以下のような結果が得られました。
- 500万円以下の案件
粗利益率は30%以上、場合によっては50%を超える案件もありました。この価格帯の案件は短期間で完了し、小規模な工事が多いため、G社のリソースに最も適していました。 - 2000万円までの案件
粗利益率は約25%と、収益性は良好ですが、小型案件ほどの効率は期待できません。 - 2000万円以上の案件
3000万円を超える案件では、粗利益率が10%台に低下。さらに5000万円以上の大型案件では、10%を切るケースも見られました。この価格帯の案件は、長期化する工期やリソースの過剰集中が主な課題で、G社にとって大きな負担となっていました。
このデータは、G社が特に小型物件で高い収益性を実現している一方で、大型物件が経営の不安定要因となっていることを示していました。
小型物件への転換
社長にこれらのデータを示し、分析結果を説明したところ、すぐに納得されました。「これまで大型案件のほうが会社の成長につながると思い込んでいましたが、実際は逆だったようです」と社長は言いました。そして、「1000万円以下の案件に絞るべきだ」と結論付けました。
私も「その判断は正しいと思います。G社の規模や体力に最も適しているのは1000万円以下の小型物件です」と賛同しました。この決定により、G社は大型物件の落札を控え、小型物件に集中する方針を採用しました。
方針転換の結果
方針転換の効果はすぐに現れました。高収益かつ短工期の案件が増えることで、キャッシュフローが安定し、業績が改善し始めたのです。また、リソースの過剰集中が解消され、業務の効率化も進みました。
G社の成功事例は、企業規模に合った価格帯を選定することの重要性を示しています。特に小規模な企業の場合、収益性の高い案件に絞ることで、限られたリソースを最大限に活用し、経営の安定性を高めることが可能です。
経営者への教訓
この事例が教えているのは、事業の効率性と収益性を向上させるためには、案件の選定基準を明確にすることが不可欠だという点です。価格帯ごとの粗利益率を把握し、自社の規模やリソースに最も適した価格帯に集中することで、経営効率が飛躍的に向上します。
「大型案件が有利」という思い込みに固執することなく、データに基づいた冷静な分析と判断を行うことが、長期的な成功につながるのです。企業規模や業種によって最適な価格帯は異なるものの、いかなる場合でも、価格帯と収益性の関係を見極めることが、経営戦略の核心であると言えます。
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