次に、需要のない製品に対する値上げ要求についてだ。当初この案を持ち出した際、社長は「そんなのは論外だ。そんな提案をしても値上げなんて絶対に受け入れられるわけがない、無駄だ」と一蹴したのだ。
しかし、それは誤解だ。値上げが実現しない可能性があったとしても、その提案には値下げ要求の圧力を和らげる効果が期待できる。さらに、最近では鋳物やメッキ業界が業者間で結束して値上げを求めたり、申し合わせによって成功を収めた事例も存在している。
かつてのように、値下げ要求を受け入れなければ仕事が取れなかった時代とは状況が異なる。今では、採算の取れない仕事を断る会社が増えている。そうでもしなければ、会社自体が存続できないからだ。
採算の合わない仕事に対して値上げを要求することこそ、経営者としての責任と言える。S社の場合、仮に値上げ要求が受け入れられず、その製品を引き上げると親会社が宣言したとしても、それはむしろ願ったり叶ったりの展開だ。
つまり、本来あるべき姿勢は、値上げ要求が認められないのであれば、その仕事を返上するという意思を明確に示すことだ、ということになる。
値上げ要求は経営者の責任:引き合わない仕事からの脱却
S社の経営改善において、収益性の低い製品に対して値上げを要求することが重要です。初めは、社長が「値上げ要求は無駄で認められるはずがない」という消極的な姿勢でしたが、実際にはそうではありません。値上げが通らなくても、値下げ要求の圧力を和らげる効果が期待でき、さらに近年、鋳物やメッキ業者などは連携して値上げ要求を成功させた例もあります。
過去には、値下げ要求を受け入れなければ仕事を得られない時代もありましたが、現在は引き合わない仕事を返上する企業が増加しています。利益が出ない仕事を無理に続ければ、企業の持続性が損なわれてしまうからです。したがって、収益性の悪い製品に対して適正な価格を求めることは、経営者としての責任といえるでしょう。
もしS社が値上げを要求し、それが認められなかった場合、引き合わない仕事を辞退する意志を示すことも選択肢です。これにより、経営資源を利益を生み出す業務に集中させ、持続可能な収益基盤を築くことが可能となります。値上げ要求は単なるコストの交渉ではなく、会社の将来を見据えた戦略的な意思決定の一環であり、経営者として果たすべき責務なのです。
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