価格差異(かかくさい) とは、実際に支払った価格と計画または標準で設定された価格との間に生じる差を指します。
これは製造業や小売業などで、原材料や部品、商品の購入価格を分析する際に重要な指標として使われます。
価格差異の計算式
価格差異は次の式で計算されます:
[
価格差異 = (実際単価 – 標準単価) \times 実際購入数量
]
- 実際単価:実際に支払った購入単価。
- 標準単価:計画時または標準的に設定された購入単価。
- 実際購入数量:実際に購入した数量。
価格差異の例
例1:価格差異が発生した場合
- 実際単価:120円
- 標準単価:100円
- 実際購入数量:1,000個
計算:
[
価格差異 = (120円 – 100円) \times 1,000個 = 20,000円(マイナス差異)
]
解釈:
実際単価が標準単価よりも高く、コストが20,000円余計にかかった。
例2:価格差異が有利な場合
- 実際単価:90円
- 標準単価:100円
- 実際購入数量:1,000個
計算:
[
価格差異 = (90円 – 100円) \times 1,000個 = -10,000円(プラス差異)
]
解釈:
実際単価が標準単価よりも低く、10,000円分のコスト削減ができた。
価格差異の発生要因
1. 原材料や部品の価格変動
- 市場価格の変動により、実際価格が標準価格から乖離する。
2. 購入先の変更
- 新しい供給業者の選定により、価格が変動する。
3. 購入条件の変更
- 取引条件(支払い条件、ロットサイズなど)の変更が影響。
4. 為替レートの変動
- 輸入材料の場合、為替レートの変動が価格に影響を与える。
5. 見積りの誤差
- 標準単価の設定が市場実態と乖離している場合。
価格差異の会計処理
価格差異は、製造業においては材料費の一部として記録されるか、価格差異として独立して管理されます。
1. 標準価格を採用して材料費を計上
購入時点では標準単価で材料費を計上し、価格差異は独立して記録。
例:標準単価100円、実際単価120円、購入数量1,000個
- 材料費(標準価格):100円 × 1,000個 = 100,000円
- 価格差異:20,000円(実際価格との差額)
仕訳:
借方:材料費 100,000
借方:価格差異 20,000
貸方:買掛金 120,000
2. 実際価格で材料費を計上
購入時点で実際単価を材料費として記録する場合、価格差異は発生しません。
例:実際単価120円、購入数量1,000個
借方:材料費 120,000
貸方:買掛金 120,000
価格差異の管理ポイント
1. 標準価格の見直し
- 定期的に市場価格や取引条件を調査し、標準単価を適正化。
2. 購入条件の交渉
- サプライヤーと価格や取引条件の交渉を行い、コスト削減を図る。
3. 購入先の評価
- 現行のサプライヤーと新規サプライヤーを比較し、最適な購入先を選定。
4. 為替リスクの管理
- 為替変動リスクをヘッジするための対策を講じる。
5. 記録の精度向上
- 実際価格と標準価格を正確に記録し、差異を分析。
価格差異の改善方法
1. 購入先の変更
- コストパフォーマンスの良い業者を選定。
2. 仕入れ量の調整
- 一括購入や数量割引を活用して価格を引き下げる。
3. 競争入札の実施
- 複数業者からの見積もりを比較して価格交渉を行う。
4. 生産スケジュールの最適化
- 繁忙期や需給変動による価格変動を回避するため、生産計画を見直す。
価格差異のメリットとデメリット
メリット
- コスト管理の可視化
- 実際価格と標準価格の違いを明確に把握。
- 改善ポイントの特定
- 原材料費や仕入条件の課題を特定可能。
- 業務効率の向上
- 標準価格の設定と実際価格の分析が効率的な購買活動を促進。
デメリット
- 標準価格の設定が難しい
- 市場価格が頻繁に変動する場合、標準単価の設定が困難。
- 短期的な影響に弱い
- 一時的な価格変動で大きな差異が発生する可能性。
価格差異のまとめ
価格差異 は、実際単価と標準単価の差から生じるもので、企業のコスト管理や調達戦略を評価する上で重要な指標です。
適切な標準価格の設定と実際価格の分析を通じて、購買コストの削減や仕入れ効率の向上を目指すことが可能です。
経理や調達担当者は、価格差異の原因を分析し、サプライヤーとの交渉や市場動向の把握を通じて、企業のコスト競争力を強化するスキルが求められます。
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