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■引用原文(日本語訳)
『ダンマパダ』第十二章「自己」第158偈
「先ず自分を正しくととのえ、次いで他人を教えよ。そうすれば賢明な人は、煩わされて悩むことが無いであろう。」
■逐語訳
- 先に(pubbeva)
- 自己を整え(attaṃ visodhaye)
- その後に(atha pacchā)
- 他を教えるべし(pare saññape)
- そうすれば賢者は(so hi paṇḍito)
- 煩わされず苦しまず(na kilissati)
■用語解説
- 自己を整える(attaṃ visodhaye):「浄める」「正す」「訓練する」の意。思考・言葉・行動の一致をはかること。
- 他を教える(pare saññape):他人に道を示す、説得する、指導するという意味。
- 賢者(paṇḍita):知識だけでなく、自己制御ができる実践者。
- 煩わされず(na kilissati):内面的な葛藤や後悔から解放されている状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
まずは自分自身をよく整え、行いや心を浄めたうえで、他人を導きなさい。そうすれば、賢明な人は、自分の矛盾や未熟さによって悩まされることはないであろう。
■解釈と現代的意義
この偈は、真のリーダーシップの基本を明確に示しています。つまり「自分を律していない者は、他人に説教すべきではない」という厳しい倫理です。自分自身が実行していないことを他人に要求すれば、言行不一致によって信頼を失い、内面でも後悔や煩悩が生じます。
仏教的にはまず「自己の浄化」=「修行・内省・行為の一致」が優先され、そこを乗り越えた人間こそ、他を導く資格を持つと説かれています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
リーダーシップ | 指導者はまず自身の行動・姿勢を正し、その実践をもって人に語るべき。言葉より行動が信頼を生む。 |
人材育成 | 上司が自身の課題を放置したまま部下を叱れば、反発や混乱を招く。まず「自分自身の整備」が教育の前提。 |
マネジメント倫理 | 方針や指示が現場に届く前に、まず自分自身がその規範を体現しているかを問う。 |
自己成長 | 他人にアドバイスしたくなったときほど、自分自身の内面や行動を見直す機会にする。 |
■心得まとめ
「まず己を鍛え、次に人を導け。言葉より姿勢が道を示す」
自分を律することなしに他人を律しようとする者は、内外に矛盾を抱え、苦しむことになる。まず自らの姿勢・習慣・心構えを正すこと。それができてこそ、他人の指導も自然と信頼と共に伝わる。これは、すべてのビジネスリーダー、教育者、親、上司に共通する普遍の鉄則です。
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