人を導くとき、必要なのは“叱責”だけではない。
孔子は、感情を露わにした子路に対し、厳しく戒めるばかりではなく、そっと励ますような言葉をかけた。
「由(子路)よ。徳の本質を理解し、それを実際に身につけている者は少ないなあ」と語った孔子の言葉は、
一見、世を憂うようでいて、実は弟子への信頼と期待に満ちている。
これは、ただの叱咤ではなく、子路の成長を信じる優しい認知と励ましである。
人を育てる本当の力とは、相手の弱さを見たうえで、その可能性を信じるまなざしに宿る。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、由(ゆう)や、徳(とく)を知(し)る者(もの)は鮮(すく)なし」
孔子のまなざしは、弟子の可能性にそっと光を当てていた。
注釈
- 「由(ゆう)」:子路の名。孔子の高弟で、情熱と行動力を兼ね備えた人物。
- 「徳を知る」:単に知識として知るだけではなく、その意味と価値を理解し、自らの行動に落とし込むこと。
- 「鮮し(すくなし)」:少ない、まれであるという意味。
- この言葉は、子路を叱った後のフォローとする見方もあり、子路の未熟さを責めるのではなく、その成長を促す愛の言葉として捉える解釈が有力です。
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