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真の偉大さは、声高には語られない

― 治めながらも、関与していないように見える深い力

孔子は、古代中国の理想の君主である**舜(しゅん)と禹(う)**を称え、
その統治のあり方を「巍巍(ぎぎ)たるもの」――壮大で高貴なものと評した。

彼らは天下を治めながらも、自らを前に出さず、あたかも関与していないかのようにふるまった。
それでいて、国は秩序立ち、すべてがうまくいっていた。

これは、真に偉大な人物ほど、その偉大さを誇らず、自然と物事を治めるという理想を語っている。

目立たずとも、深い知恵と信頼によって組織や人々を動かす――
それこそが、本物のリーダーシップなのだ。


原文と読み下し

子(し)曰(のたま)わく、巍巍(ぎぎ)たるかな、舜(しゅん)、禹(う)の天下を有(ゆう)つや、而(しか)してこれに与(あずか)らず。


注釈

  • 巍巍(ぎぎ)たる:そびえるように高く、尊く、堂々としているさま。人格や統治ぶりの壮大さを表す。
  • 舜(しゅん)、禹(う):古代中国の聖王。ともに民のために尽くし、功績が高く、特に禹は夏王朝を開いたとされる。
  • 而してこれに与らず(あずからず):自分が積極的に関与しているようには見せない。それでもすべてがうまくいっている、という意。

原文:

子曰、巍巍乎、舜禹之有天下也、而不與焉。


書き下し文:

子(し)曰(いわ)く、巍巍(ぎぎ)たるかな、舜(しゅん)・禹(う)の天下を有(たも)つや、而(しか)してこれに与(あずか)らず。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 「巍巍たるかな」
     → なんと偉大なことか!
  • 「舜・禹の天下を有つや」
     → 舜王と禹王は天下を治めながらも、
  • 「而してこれに与からず」
     → それ(権力や私利)に執着せず、私的に利用することがなかった。

用語解説:

  • 巍巍(ぎぎ)たる:山のように高く、偉大であるさま。荘厳で威厳ある様子。
  • 舜(しゅん)・禹(う):中国古代の理想的な帝王。舜は堯から禅譲を受け、禹は治水の功績により舜から帝位を譲られた。どちらも「徳による統治」の典型。
  • 与からず(あずからず):私的な利益を共有しない、関与しない、執着しない。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子はこう言った:

「なんと偉大なことか!
舜や禹は天下の支配者でありながらも、私利私欲には関与しなかったのだ。」


解釈と現代的意義:

この章句は、**「徳によって権力を持ちながらも、それに溺れず私しないこと」**の崇高さを、孔子が感嘆している場面です。

舜・禹は中国古代における「聖王」の代表であり、「禅譲」=徳によって位を譲り受け・譲り渡すという理想的な統治の象徴です。

孔子は、彼らが天下(国家)を治めながら、その権力を私物化せず、慎み深く行動した姿勢に心からの敬意を表しています。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「権限を持つほどに、慎みが試される」

  • 舜や禹のように、トップに立つ人ほど、「自分のためではなく、人のために行使する権力」を意識しなければならない。
  • ポジションが上がるほど、「謙虚さ・公正さ・自制」が不可欠になる。

2. 「功績を“私物化”しない態度が信頼を生む」

  • 成果や影響力を自分の手柄として独占せず、組織・チーム全体の結果として受け止める姿勢が“巍巍たる人物”をつくる。

3. 「真のリーダーは、与えられた権限に“与からない”」

  • 決裁権・人事権・予算執行などの権力を、「私利」や「評価操作」のために使わない。
  • 責任は引き受け、利益は譲ることが、リーダーとしての徳を高める。

ビジネス用心得タイトル:

「頂に立っても驕らず、力を持っても私さず──“巍巍たる人”が組織を育てる」


この章句は、リーダーシップの極意は“無私”にあることを、簡潔かつ深く説いています。
経営者研修、管理職登用研修、企業理念づくりの中核的な思想として取り入れるのに最適です。


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