目次
■引用原文(日本語訳)
第二三章 象(三二七)
つとめはげむのを楽しめ。
おのれの心を護れ。
自己を難処から救い出せ。
泥沼に落ちこんだ象のように。
■逐語訳
- つとめはげむのを楽しめ:善い行い・努力・修行に喜びを見出せ。
- おのれの心を護れ:欲望や怒りに乱されぬよう、自己の心をよく監視せよ。
- 自己を難処から救い出せ:困難・迷い・堕落・煩悩の状態から、自力で抜け出すように。
- 泥沼に落ちこんだ象のように:深みにはまり、身動きが取れなくなった象が必死に抜け出そうとするように。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
つとめ(ヴィリヤ) | 精進・努力のこと。仏教修行における基本的な徳目のひとつ。 |
心を護る | 仏教において最重要の修行。「心がすべてをつくる」ため、心の制御と見張りは常に不可欠。 |
難処 | 迷いや煩悩に満ちた状態。再び輪廻に陥るような危機。 |
泥沼の象 | 本来は力強い象ですら抜け出せない苦境の象徴。煩悩に絡め取られた自己のたとえ。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
善き努力を喜んで行い、自分自身の心をよく護りなさい。
そうして、自らを迷いと苦しみの深みから救い出しなさい。
あたかも泥沼に落ちて、そこから脱出しようとする象のように。
■解釈と現代的意義
この節は、仏教における「自己救済」の精神を端的に示したものです。
**「他人に頼らず、自らの努力と心の護りによって、苦しみの原因から抜け出せ」**という強い自己責任のメッセージが込められています。
泥沼は、煩悩・迷い・怠惰・感情の嵐など、現代においても誰もが落ちる可能性のある状態です。
そのような状況に陥ったとき、「努力を苦とせず」「心を守り」「他力本願ではなく自ら這い上がる」という意志が、人生の再生に必要不可欠であることを教えてくれます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
モチベーション管理 | 「努力すること自体」を楽しめる人は、困難に対しても前向きに進み続けられる。 |
セルフコントロール | 心を乱す情報・誘惑・人間関係に飲まれず、自分の精神状態を安定させる習慣が重要。 |
自己回復力(レジリエンス) | 困難な状況でも他責にせず、自ら打開策を見つけて行動できる人が信頼される。 |
ピンチの中での決意 | トラブル・業績不振・批判などの「泥沼」に落ちたとき、そこから這い上がろうとする意志こそが転機になる。 |
■心得まとめ
「心を護り、勤めを楽しみ、自らの泥沼から立ち上がれ」
人生には、誰しもが落ち込む「泥沼」がある。
だが、そこから抜け出せるかどうかは、日々の努力を楽しむ姿勢と、心を制する力にかかっている。
ビジネスの現場でも、困難に見舞われたとき、他人のせいにせず、**「この状況を変えるのは自分自身」**と腹をくくった者だけが、真に這い上がるのです。
この章句で『象』章の実践的な教訓が一段と深まります。
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