目次
🔖 原文(日本語訳)
「悩める人々のあいだにあって、われらは悩み無く、いとも楽しく生きて行こう。
悩める人々のあいだにあって、われらは悩み無く暮そう。」
――『ダンマパダ』第5章「愉楽品」第45偈
📝 逐語訳と要点解説
- 悩める人々(dukkhitā):苦しみや不安、嫉妬や怒りなど煩悩に満ちた一般的な人々。
- われら(mayaṁ):仏道を歩む者、あるいは心の修養に努める者。
- 悩み無く(dukkhā vina):煩悩から離れ、心の静けさを保っている状態。
- いとも楽しく(sukhaṁ jīve):真の意味で心穏やかに、充実して生きること。
🧩 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
悩み(dukkha) | 仏教の根本概念。「苦」と訳される。満たされない心、老病死、比較、執着などすべての不安定さ。 |
悩み無く(adukkha) | 一切の煩悩を離れた涅槃的境地。 |
楽しく(sukha) | 仏教では、単なる快楽ではなく「心の安寧・平穏」を意味する。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
私たちは、悩みに支配された世界の中で、
悩みを持たずに生きることができる。
悩みにまみれた人々の中でも、
心静かに、穏やかに暮らすことは可能である。
仏教の道は、そのような静かなる喜びへの道である。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、周囲の状況や他人の感情に左右されず、
自分の心の静けさを守る力の大切さを教えています。
- 現代社会では、情報・感情・人間関係など、あらゆる「悩みの波」に囲まれて生きている。
- しかし、「周囲が悩んでいる=自分も悩まなければならない」わけではない。
- 悩みに共鳴しすぎず、冷静に距離をとり、自分の心の内側に平和を築くことができる。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
マインドフルネス | 周囲の混乱や忙しさに巻き込まれず、自分の呼吸・心に立ち返る習慣が平常心を保つ鍵。 |
組織内の感情知性(EQ) | 他人の怒り・不満・焦燥に同調しすぎず、客観的・平静に判断できる人がリーダーとなる。 |
クレーム対応や危機管理 | 相手が感情的であるほど、こちらが冷静さを保つことが重要。「共鳴」ではなく「共感+自律」が要。 |
キャリア形成 | 周囲の成功・不安・競争に惑わされず、自分のペースで成長する「内発的キャリア意識」が求められる。 |
✅ 心得まとめ
「心の平穏は、選び取るものだ」
たとえ、世界中が悩みに沈んでいても、
自分まで悩む必要はない。
心の苦しみとは、外の出来事ではなく、
それにどう向き合うかという内面の選択である。
他人の怒り、社会の不安、未来への焦り――
それに「巻き込まれない自由」こそ、
現代人にとっての仏道の実践である。
この偈は、煩悩の三毒(貪・瞋・癡)を超える心得の第3部に相当します(43偈=貪、44偈=無執、45偈=無癡・静けさ)。
この3連偈で「乱れた世の中にあっても清らかに生きる姿勢」が美しく描かれています。
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