MENU

真心があれば、自然も人も動く

真心から出た一念は、季節の理すら変え、堅牢な城壁を崩し、金属をも貫く力を持つ。
一方、偽りの心で飾り立てた者は、外見ばかりで中身がない。
そんな者は人と接すれば嫌悪を抱かれ、自分自身と向き合っても恥ずかしさに苛まれる。

形式より本質、見た目よりも内面。
人としての重みを決定づけるのは、地位でも能力でもなく「誠の心」なのだ。


原文(ふりがな付き)

人心(じんしん)、一(ひと)たび真(しん)なれば、便(すなわ)ち霜(しも)をも飛(と)ばすべく、城(しろ)をも隕(おと)すべく、金石(きんせき)をも貫(つらぬ)くべし。若(も)し偽(いつわ)りの人のごときは、形骸(けいがい)は徒(いたず)らに具(そな)わるも、真宰(しんさい)は已(すで)に亡(ほろ)ぶ。人に対(たい)せば則(すなわ)ち面目(めんもく)憎(にく)むべく、独(ひと)り居(お)れば則(すなわ)ち形影(けいえい)自(みずか)ら媿(は)ず。


注釈

  • 真(しん)なれば:偽りのない、まことの心からの思いであること。
  • 霜を飛ばす/城を隕す/金石を貫く:すべて強い真心の働きの比喩。自然や物理の法則をも超える力として描かれる。
  • 形骸(けいがい):外見・形だけの存在。
  • 真宰(しんさい):本質・本心・良心。人間の内的な核。
  • 面目可憎(めんもくにくむべし):人と接するときの表情や態度が嫌われる。
  • 形影自媿(けいえいみずからはず):一人でいても自分に対して恥ずかしくなること。
目次

1. 原文

人心一眞、霜可飛、城可隕、金石可貫。
若僞之人、形骸徒具、眞宰已亡。
對人則面目可憎、獨居則形影自媿。


2. 書き下し文

人心、一たび真なれば、霜をも飛ばすべく、城をも隕すべく、金石をも貫くべし。
偽りの人は、形骸は徒らに具われども、真宰はすでに亡ぶ。
人に対すればすなわち面目憎むべく、独り居ればすなわち形影自らに媿ず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 人心、一たび真なれば、霜をも飛ばすべく、城をも隕すべく、金石をも貫くべし。
     → 人の心がひとたび真実であれば、厳しい霜さえも吹き飛ばし、堅固な城も落とし、金石さえも貫く力を持つ。
  • 偽りの人は、形骸は徒らに具われども、真宰はすでに亡ぶ。
     → 偽りに満ちた人間は、ただ形だけは人間の姿をしているが、その内にある本質=魂(真宰)は既に失われている。
  • 人に対すればすなわち面目憎むべく、独り居ればすなわち形影自らに媿ず。
     → 他人と向き合えばその顔は嫌われ、独りでいれば自分の影さえ恥じるような有様である。

4. 用語解説

  • 人心一眞(じんしん いちしんなれば):人の心がひとたび誠実に、真実になれば。
  • 霜可飛(しも とばすべし):厳しい霜を吹き飛ばす。真心の力を自然すらも動かすほどの強さとして象徴。
  • 城可隕(しろ おつべし):堅固な城すらも落ちる。強い真心が難攻不落の障壁すら突破することの比喩。
  • 金石可貫(きんせき つらぬくべし):金属や石も貫く。真の誠意があれば硬いものも貫通する。
  • 偽之人(いつわりのひと):偽善者、表面だけを繕う者。
  • 形骸徒具(けいがい いたずらに そなわれど):外見だけの人間。身体はあるが、内面=魂が欠けている状態。
  • 眞宰(しんさい):本質的な主宰、つまり「魂」や「良心」を指す。
  • 自媿(じき):自らを恥じる。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

人の心が一度でも真実・誠実であれば、その力は霜をも飛ばし、城をも崩し、金属や岩さえも貫くほどの強さを持つ。
一方で、偽りに満ちた人間は、ただ外見だけが人間らしくとも、その中の魂(本質)はすでに失われている。
そのような人間は、人と接すれば嫌悪され、独りでいるときすら自分の影に恥じ入るほどである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は「誠の力」と「偽りの虚しさ」を極めて対照的に描いています。

  • 真心・誠意があれば、それは理屈を超えた影響力を持つことを肯定しています。
  • 一方、偽りや表面だけを繕う人生は、自他ともに不信・嫌悪・恥の対象になると戒めています。

このような思想は、単なる道徳訓ではなく、「人としての在り方」に直結する実践的な智慧です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「誠実な人の力は、周囲を動かす」

誠意のこもった言葉や行動は、冷えきった人間関係をも融かし、困難なプロジェクトをも動かす推進力となる。たとえ権限がなくても、真剣な心には人は自然と引き寄せられる。

● 「偽りのリーダーは、孤独と不信を招く」

ポジションや肩書きだけを頼りに、内面の誠実さが欠けていると、部下にも顧客にも嫌悪され、孤立を深めることになる。
独りの時間にも自責の念に苛まれる──それは「心なき統治」の末路。

● 「企業文化における“真宰”の重要性」

組織においても、「理念」「魂」がなければ、単なる“器”でしかない。経営理念を軽視し、形式だけを重んじる文化は、やがて信頼も持続性も失う。


8. ビジネス用の心得タイトル

「誠は岩をも貫く、偽りは影すらも欺けぬ」


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次