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恐怖の中に慈悲を求める――力は制御と共にあるべし


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■原文(第11章 第25節)

あなたの口が炎のように燃え、世界の終末の火のようであるのを見て、
私は方向感覚を失い、逃げ場もわかりません。
どうか御慈悲を――
神々の主よ、全世界の住処よ。


■逐語訳(一文ずつ訳す)

  • あなたの口を見て、(テ・ムカーニ・ドリシュトヴァー)
  • 炎のように燃え上がる、終末の火のごときそれを見て、(ジャヴァラダーンスラ・ヴィカーララーラニ)
  • 私は方角もわからず、(ナ・ラブヘ・ディシャム)
  • 逃げ場も見出せません(チャ・サルヴァター・プラナシュヤーミ)。
  • どうか私をお守りください(クリパーム・クル)。
  • 神々の主よ(デーヴェーシャ)、世界の住処たるお方よ(ジャガン・ニヴァーサ)。

■用語解説

用語解説
終末の火(カラグニ)世界が滅びるときに宇宙を焼き尽くす火。強大な破壊力・終末の象徴。
方角がわからない理性の喪失、混乱、精神的錯乱を意味する表現。
神々の主(デーヴェーシャ)全ての神の上に立つ存在、すなわち至高神であるクリシュナ(ヴィシュヌ)。
世界の住処(ジャガン・ニヴァーサ)あらゆる生命と物質の根源・基盤。神はこの世に遍在し、全てを支えているとされる。

■全体の現代語訳(まとめ)

あなたの燃え上がる口――まるで世界を終わらせる火のようなそれを見て、
私は方角もわからず、逃げ道すら見出せません。
どうかお慈悲をお与えください。
神々の主よ、この世界のあらゆる存在の拠り所であるあなたよ。


■解釈と現代的意義

この節は、力の極みにある存在の恐ろしさと、
その中で 「慈悲」への希求がいかに人間の本能的なものであるかを表しています。

アルジュナは今、
「神の栄光」だけでなく、「神の破壊の面」――つまり時間(カール)としての神を見ています。

この体験は、「支配と破壊の力に接したとき、いかに人は無力であるか」
という、人間の根源的な認識を呼び起こさせます。

それでもアルジュナは、逃げるのではなく、慈悲を求めるのです。
ここに「信」と「覚悟」が見て取れます。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
権力・影響力の側面トップの権威が圧倒的であるとき、部下は逃げ場を失う。恐怖を与えるより、信頼を得る指導を。
組織における圧力の極限プレッシャーが限界を超えると人は「方向感覚」を失う。過重な負担は危機対応力を奪う。
リーダーの自制と慈悲の価値大きな力を持つ者ほど、「慈悲・配慮・安全」を発する責任がある。統率には恐怖より敬愛が有効。

■心得まとめ

「力の極みにこそ、慈悲が必要である」

人は、巨大な力に直面したとき、方向すら見失う。
逃げ道もないとき、ただ救いを願い、助けを求めるしかない。
だからこそ、力ある者には配慮と慈悲が求められる
支配する者こそ、怖れられるよりも、信頼される存在であるべきである。


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