目次
📜引用原文(日本語訳)
第六十六偈
蛇の毒が(身体に)ひろがるのを薬でとめるように、
貪ぼりが起ったのをとめる修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第六十六偈
🔍逐語訳(意訳)
- 蛇の毒が広がるのを薬でとめるように:
強く広がりやすい毒(貪欲)を、早めに治療(制御)するというたとえ。 - 貪ぼりが起ったのをとめる修行僧:
欲望や執着の心が湧き起こった瞬間に、それに気づいて自ら止める者。 - こなたの岸を捨て去る:
迷いや煩悩の世界から抜け出し、悟りの境地(彼岸)へ至ること。 - 蛇が脱皮して旧い皮を捨てるようなもの:
古い執着・自己中心的な心を脱ぎ捨て、新たに軽やかな存在として生まれ変わる姿。
📚用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
貪ぼり(ラーロ) | 欲望・執着。とくに物質的欲求や快楽に対する強い執着心。三毒の一つ。 |
岸(サンサーラ) | 煩悩や迷いに満ちた俗世。 |
薬 | 智慧・省察・戒律・気づきなど、欲望を制する内的な力。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
欲望という毒は、
人の心を知らぬ間に蝕んでいく。
それを早めに気づき、智慧によって制する修行僧は、
迷いの世界から抜け出し、
蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように、
新たな存在として悟りの岸に至る。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、**「欲望は育つ前に断つべし」**という智慧を教えています。
欲望そのものが悪なのではありません。
問題は、それがコントロールを失い、
心を支配してしまうことにあります。
現代において「貪り」は、
- 終わりなき物欲(もっと良いものが欲しい)
- 他者との比較からくる焦燥(自分も手に入れたい)
- 成果や承認への執着(認められたい、評価されたい)
といった形で、私たちの心に忍び寄ります。
だからこそ、**気づいた時点で「立ち止まる力」**が求められるのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
マーケティングと欲望の管理 | 顧客や自分自身の欲望を煽り続けると、持続可能性を失う。価値の本質に立ち返る視点が大切。 |
キャリア形成 | 出世・昇給・名声を求めすぎると、人生の軸がぶれる。「なぜそれが欲しいのか」を見つめ直すこと。 |
マネジメント | 欲望のコントロールができるリーダーは、短期成果ではなく長期的信頼を重視する。 |
ブレない意思決定 | 「もっと欲しい」が判断基準になると、無理な投資・過剰労働・倫理逸脱を引き起こす。 |
✅心得まとめ
「欲望は敵ではない。だが、制御できぬ欲は毒になる。」
私たちは欲望と共に生きている。
しかし、その欲望に飲まれれば、
それは心を曇らせ、苦しみの輪を広げていく。蛇が皮を脱ぐように、
「もっと欲しい」という古い自分を捨てよ。
欲望に振り回されない心こそが、
本当の自由への第一歩である。
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