目次
📜引用原文(日本語訳)
第六十二偈
蛇の毒が(身体に)ひろがるのを薬でとめるように、
情欲が起ったのをとめる修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が旧い皮を脱皮して捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第六十二偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 蛇の毒が(身体に)ひろがるのを薬でとめるように:
猛毒が全身を侵す前に、それを食い止める知恵と対処が必要であるというたとえ。
ここでの「薬」は、心の修行や正しい気づき(サティ)を象徴している。 - 情欲が起ったのをとめる修行僧は:
感覚的欲望が湧いたとき、流されずに抑止・超越できる者こそ真の修行者である。 - こなたの岸を捨て去る:
煩悩と執着に満ちた「此岸(しがん)」を離れ、涅槃(彼岸)へ至る。 - 蛇が旧い皮を脱皮して捨て去るようなものである:
古い価値観・習性を捨てて、新しい悟りの存在へと生まれ変わること。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
情欲(カーマ) | 感覚的快楽への欲望。五欲(色・声・香・味・触)への執着。 |
蛇の毒 | 煩悩の毒。制御しなければ、心身を蝕む。 |
薬 | 八正道・禅定・戒律・正念などの修行法。 |
脱皮 | 成長と解放の象徴。過去の自分を超えて変容すること。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
心に情欲が起こるのは、人間の自然な反応かもしれない。
しかし、それに流されれば、
それは蛇の毒のように、全身(心)を蝕んでゆく。
だが、
もしあなたが「薬(=智慧と修行)」を手にしていれば、
その毒は止まり、解毒される。
そうして情欲を制した者は、
まるで蛇が古い皮を脱ぐように、
執着と苦しみの此岸を離れ、
自由の世界へと至るのである。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、**「情欲を否定する」のではなく、「情欲を正しく扱うこと」**の大切さを説いています。
情欲は、否定すれば増し、
放任すれば堕落を生む。
だからこそ、
「気づき(マインドフルネス)」と「知恵(パニャー)」という薬によって、
それが広がる前に制し、観察し、静かに離れる必要があるのです。
現代では、
スマートフォンの通知、SNS、広告、娯楽といった外的刺激によって、
私たちは常に「欲望の蛇の毒」にさらされています。
それに気づき、薬を選べるかどうか――
それが、現代人の修行なのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
衝動的な意思決定の抑制 | 情欲や感情で判断せず、冷静な思考と長期的視点に立った判断を心がける。 |
コンテンツ中毒からの脱却 | SNSやニュースに惹かれる「欲望の毒」を認識し、意識的なデジタル・デトックスを行う。 |
欲望のマネジメント | 金銭欲・承認欲・物欲に流されず、「本当に必要なものは何か?」を問い直す。 |
メンタルヘルスの維持 | 煩悩の刺激を減らし、定期的な内省・瞑想で「薬(修行)」を取り入れることが、ストレス対処法となる。 |
✅心得まとめ
「情欲の毒は、気づきという薬で癒せ」
反応するな、観察せよ。
欲望に呑まれるな、ただ見つめよ。
そのとき、
あなたの心は蛇のように古い皮を脱ぎ捨て、
軽やかに、新しい自分へと変容していくだろう。
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