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人は生まれながらに才を持つが、磨かねば道を知らぬ
太宗は中書令・岑文本に向かって、人の本質についてこう語った。
「人は生まれながらにして性質を授かっているが、それを活かすには学問によって磨かねばならない」と。
この考えは自然界の比喩によって示された。
- 大蛤は水分を内に秘めながらも、月光を浴びて初めてその水を噴き出す。
- 木は火気を帯びながらも、火打ち石によって初めて発火する。
これと同じく、人間も内に霊妙な知性を宿しながら、学ばねばそれを世に現すことはできないというのである。
太宗は、蘇秦が眠気を断つために股を刺した話、董仲舒が読書に集中するために帷(とばり)を垂らした逸話を引き、
**「努力をもって学に励む者こそが、名を立てるにふさわしい」**と強調した。
これに応じて岑文本もまた、礼記の教え「玉は磨かなければ器とならず、人は学ばなければ道を知らず」を引用し、
「人の性質は似ていても、心の在り方は異なる。だからこそ学びが必要なのだ」と述べた。
出典(ふりがな付き引用)
「人(ひと)定性(ていせい)を稟(う)けるといえども、必(かなら)ず学(まな)びて以(もっ)て其(そ)の性(せい)を成(な)すべし」
「蜃性(しんせい)水(みず)を含(ふく)むといえども、月光(げっこう)を待(ま)ちて水(みず)垂(た)る。木性(もくせい)火(ひ)を懐(いだ)くといえども、燧(すい)を動(うご)かして焔(ほのお)を発(はっ)す」
「蘇秦(そしん)刺股(しこ)、董生(とうしょう)帷(とばり)を垂(た)る。芸(げい)に勤(つと)めざれば、其(そ)の名(な)立(た)たず」
「『礼(れい)』に云(い)う、『玉(たま)琢(みが)かざれば器(うつわ)とならず。人(ひと)学(まな)ばざれば道(みち)を知らず』と」
注釈
- 定性(ていせい):生まれながらに授かる本質・資質。
- 蜃(しん):大蛤(おおはまぐり)。神秘的な存在として中国古典に登場。
- 燧(すい):火打ち石のこと。
- 蘇秦・董仲舒(そしん・とうちゅうじょ):古代中国の著名な学者。勉学に励んだ逸話が有名。
- 懿徳(いとく):すぐれた徳。学びを重んじる心が立派な徳とされる。
パーマリンク(スラッグ)案
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(心を玉のごとく磨け)learning-reveals-potential
(学びは本質を照らす)knowledge-is-earned
(知は授からず、得るもの)
この章は、「人は磨かなければ輝かない」という普遍的な自己鍛錬の原理を示しており、
特にリーダーや知識人、教育に携わる者にとって、謙虚に学び続ける姿勢の重要性を説いた教えです。
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