予定消費単価は、あらかじめ決められた単価を基準に材料費を計算する手法です。
この方法により、材料費の計算が効率化し、一定期間内の単価変動による影響を抑えることができます。
目次
1. 予定消費単価の特徴
メリット
- 材料単価の変動による計算のばらつきを抑えられる。
- 消費単価の計算待ちを回避し、迅速な材料費計算が可能。
デメリット
- 実際消費額との乖離が差異として発生する。
- 月末や会計年度末に差異の処理が必要。
2. 予定消費額と実際消費額の計算
計算式
3. 月末の処理
月末に実際消費額を計算し、材料勘定を調整します。このとき、予定消費額と実際消費額との差額を材料消費価格差異として処理します。
例1: 不利差異(借方差異)の場合
条件
- 実際消費量: 50個
- 予定消費単価: @110円 → 予定消費額 = 110×50= 5,500円
- 実際消費額: 6,000円
- 差異 = 実際消費額 – 予定消費額 = 6,000−5,500=5006,000 – 5,500 = 500円(不利差異)
仕訳
借方: 材料消費価格差異 500円(不利差異) 貸方: 材料 500円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
材料消費価格差異(不利差異) | 500 | 材料 | 500 |
例2: 有利差異(貸方差異)の場合
条件:
- 実際消費量: 50個
- 予定消費単価: @110円
- 予定消費額 = 110×50= 5,500円
- 実際消費額: 5,250円
- 差異 = 実際消費額 – 予定消費額 = 5,250−5,500 = –250円(有利差異)
仕訳: 借方: 材料 250円 貸方: 材料消費価格差異 250円(有利差異)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
材料 | 250 | 材料消費価格差異(有利差異) | 250 |
4. 差異の判定
差異の種類を判定する際には、予定消費額と実際消費額の差額に着目します。
差異の符号 | 差異の種類 | 理由 |
---|---|---|
++ | 不利差異(借方差異) | 実際消費額が予定消費額を上回る(コスト増) |
−− | 有利差異(貸方差異) | 実際消費額が予定消費額を下回る(コスト削減) |
5. 会計年度末の処理
年度末には、月ごとに計上された材料消費価格差異勘定の残高を売上原価勘定に振り替えます。
例1: 借方残高(不利差異)の場合
条件: 材料消費価格差異勘定の借方残高 = 500円
仕訳: 借方: 売上原価 500円 貸方: 材料消費価格差異 500円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上原価 | 500 | 材料消費価格差異 | 500 |
例2: 貸方残高(有利差異)の場合
条件: 材料消費価格差異勘定の貸方残高 = 250円
仕訳: 借方: 材料消費価格差異 250円 貸方: 売上原価 250円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
材料消費価格差異 | 250 | 売上原価 | 250 |
6. まとめ
予定消費単価を用いることは、コスト計算の迅速化や管理の安定性を向上させる一方で、月末や年度末に差異の処理が必要となります。
この差異の処理を適切に行うことで、正確な原価計算が可能となります。
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