製造間接費の予定配賦は、製造間接費を予定配賦率を用いて計算し、製造指図書ごとに振り分ける手法です。この方法は、実際配賦の欠点を補い、計算の迅速化と一貫性を保つことができます。
目次
1. 配賦率と予定配賦額の計算
配賦率の計算式
配賦額の計算式
例題資料
- 年間製造間接費予算額: 43,200円
- 基準操業度: 480時間
- 当月の実際直接作業時間:
- No1: 20時間
- No2: 12時間
- No3: 4時間
(1) 配賦率の計算
予定配賦率=43,200/480=90 円
(2) 各製造指図書の配賦額
- No1: 90×20=1,800 円
- No2: 90×12=1,080 円
- No3: 90×4=360 円
2. 配賦額の仕訳
製造間接費を予定配賦する仕訳は以下の通りです。
仕訳
借方: 仕掛品 3,240円(No1 + No2 + No3の合計)
貸方: 製造間接費 3,240円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕掛品 | 3,240 | 製造間接費 | 3,240 |
3. 月末の差異処理
月末に実際発生額と予定配賦額の差異を「製造間接費配賦差異」として処理します。
ケース①: 実際発生額が 3,640 円の場合
- 予定配賦額: 3,240円
- 差異: 3,640−3,240=400 円(不利差異)
仕訳
借方: 製造間接費配賦差異 400円(不利差異)
貸方: 製造間接費 400円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
製造間接費配賦差異 | 400(不利差異) | 製造間接費 | 400 |
ケース②: 実際発生額が 3,140 円の場合
- 予定配賦額: 3,240円
- 差異: 3,240−3,140=100 円(有利差異)
仕訳
借方: 製造間接費 100円
貸方: 製造間接費配賦差異 100円(有利差異)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
製造間接費 | 100 | 製造間接費配賦差異 | 100 |
4. 会計年度末の処理
年度末には、月ごとに計上された製造間接費配賦差異勘定の残高を売上原価勘定に振り替えます。
ケース①: 借方残高(不利差異)
- 差異額: 400円(借方残高)
仕訳
借方: 売上原価 400円
貸方: 製造間接費配賦差異 400円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上原価 | 400 | 製造間接費配賦差異 | 400 |
ケース②: 貸方残高(有利差異)
- 差異額: 100円(貸方残高)
仕訳
借方: 製造間接費配賦差異 100円
貸方: 売上原価 100円
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
製造間接費配賦差異 | 100 | 売上原価 | 100 |
5. まとめ表
項目 | 計算方法 | 例 |
---|---|---|
予定配賦率 | 予算額 ÷ 基準操業度 | 43,200 ÷ 480=90 円/時間43,200 \, ÷ \, 480 = 90 \, 円/時間 |
配賦額 | 予定配賦率 × 基準数値 | No1: 90×20=1,800 円90 \times 20 = 1,800 \, 円 |
差異の判定 | 実際発生額 – 予定配賦額 | 3,640−3,240=400 円3,640 – 3,240 = 400 \, 円 (不利差異) |
年度末差異の振替 | 借方残高: 売上原価に振り替え | 不利差異: 借方 → 売上原価 |
6. ポイント
- 予定配賦により、製造原価計算が迅速化され、製造間接費の変動影響が軽減されます。
- 差異が発生するため、月末や年度末に適切な調整が必要です。
- 差異分析を行うことで、製造効率やコスト管理の改善に活用できます。
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