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比べることで見えてくる、自分の恵まれた立場と本来の力

物事が思うようにいかず、不満や悩みが湧いてくるとき――
そのときは、自分よりももっと困難な状況で努力を続けている人の姿を思い浮かべてみると良い。すると、自分の悩みが実は恵まれた条件の中での「ぜいたくな悩み」だったと気づき、自然と心が落ち着く。

また、少しでも気がゆるみ、怠け心が出てきたときは、自分よりも努力し、成果を上げている人を思い浮かべると良い。すると、「このままではいけない」と内から奮い立つ気持ちが生まれてくる。

これは、他人と比べて一喜一憂するということではない。他人を鏡とすることで、いまの自分の位置や心の傾きに気づき、軌道修正するための智恵である。


原文と読み下し

事(こと)稍(やや)払逆(ふつぎゃく)せば、便(すなわ)ち我(われ)に如(し)かざるの人を思(おも)えば、則(すなわ)ち怨尤(えんゆう)自(おの)ずから消(き)えん。
心(こころ)稍(やや)怠荒(たいこう)せば、便ち我(われ)より勝(すぐ)れるの人を思(おも)えば、則ち精神(せいしん)自(おの)ずから奮(ふる)わん。


注釈

  • 稍(やや)払逆(ふつぎゃく):少し物事が思う通りにいかないこと。ちょっとしたつまずき。
  • 如かざるの人:自分よりも厳しい状況にいる人。他人の苦労を思うこと。
  • 怨尤(えんゆう):恨み・不平・とがめ。自分の境遇に対する不満。
  • 怠荒(たいこう):怠けたり、心が荒れて緩んでいる状態。
  • 勝れるの人:自分よりも優れた人物。先を行く模範となる人。

パーマリンク(英語スラッグ)案

  • perspective-heals-discontent(視点の転換が不満を癒す)
  • see-lower-rise-higher(下を見て感謝し、上を見て奮い立つ)
  • humility-and-drive-through-comparison(比較が生む謙虚と向上心)

この心得は、現代においても非常に実践的です。思うように進まないとき、つい他責や自己否定に陥りがちですが、他者の境遇や努力に思いを致すことで、自分の境遇を見直し、意識を切り替えるきっかけになります。

目次

1. 原文

事稍拂逆、便思不如我之人、則怨尤自消。
心稍怠荒、便思勝我之人、則精神自奮。


2. 書き下し文

事、稍(やや)拂逆(ふつぎゃく)すれば、すなわち我に如(し)かざるの人を思えば、怨尤(えんゆう)自(おの)ずから消えん。
心、稍(やや)怠荒(たいこう)すれば、すなわち我より勝(まさ)れる人を思えば、精神自(おの)ずから奮(ふる)わん。


3. 現代語訳(逐語・一文ずつ訳)

一文目:

事稍拂逆、便思不如我之人、則怨尤自消
→ 物事が少し自分の思い通りにいかないときには、自分よりも恵まれていない人のことを思えば、不満や恨みは自然と消えていく。

二文目:

心稍怠荒、便思勝我之人、則精神自奮
→ 心が少し怠けたり気が緩んできたときには、自分より優れている人のことを思えば、気力は自然と奮い立つ。


4. 用語解説

  • 拂逆(ふつぎゃく):思い通りにいかないこと。逆境や不遇。
  • 我に如かざる人:自分より境遇や能力が劣っていると感じる他人。
  • 怨尤(えんゆう):不満や恨み。環境や他人への責め心。
  • 怠荒(たいこう):怠けたり、心が弛んで荒れること。緊張感の欠如。
  • 勝我之人:自分より優れている人。先を行く人。
  • 精神自奮(せいしんおのずからふるう):気力が自然と湧き上がり、やる気が出ること。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

物事がうまくいかず、不満を感じるときは、自分よりも困難な状況にある人のことを思えば、自然と不満や恨みの心は消えていくだろう。

一方で、心が怠けたり緩んだときには、自分よりも努力して結果を出している人のことを思い出せば、自然と気持ちが引き締まり、やる気が湧いてくるものである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、心の内側で生じる「怠惰」と「不満」という二大感情を制御する方法を教えています。

  • 不満を感じたら、下を見て感謝を思い出す
  • 怠けそうなときは、上を見て努力を奮い立たせる

つまり、他者との比較を「ねたみ」や「優越感」のためでなく、自らの精神を整えるために活用せよという教訓です。内面的な感情を自己コントロールする力こそが、持続的な成長と幸福の源となるという、現代でもきわめて有効な自己修養の智慧です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「不満のときは、感謝と謙虚さを取り戻す視点を」

うまくいかない状況で他人や会社を責める前に、今ある環境や過去の支援、自分より厳しい状況の人を思い起こすことで、冷静さと感謝の気持ちが戻る。

●「やる気が出ないときは、先行者の努力を思い出せ」

怠けそうなときこそ、目標とする先輩や成功者を思い浮かべる。彼らの姿勢を意識するだけで、自分ももう一度頑張ろうという気持ちになれる。

●「上下の視点の使い分けが“折れない心”を育てる」

劣等感に陥らずに前を見るには、「今より苦しい人もいる」「努力して報われた人もいる」という両方の視点を持つことが、折れず続ける力になる。

●「部下や同僚へのメンタルサポートにも応用できる」

不満やモチベーションの低下を訴える部下に、このような思考法を共有すれば、精神的なリフレーム(見方の転換)によって、前向きな行動を引き出せる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「不満には感謝を、怠惰には刺激を──心の舵を“比較”で正す術」


この章句は、現代の自己啓発・メンタルマネジメントにも応用できる「感情のセルフコントロール法」として非常に実践的です。

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