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📖 原文引用(『ダンマパダ』第二五章 第376偈)
その行ないが親切であれ。わかち合え。善いことを実行せよ。
そうすれば、喜びに満ち、苦悩を滅するであろう。
(原文:
Mettāvihārī yo bhikkhu,
pasanno Buddhasāsane;
Adhigacche padaṃ santaṃ,
saṅkhārūpasamaṃ sukhaṃ.
―『Dhammapada』Ch. 25, v.376)
🔍 逐語訳(逐文・簡潔)
- Mettāvihārī yo bhikkhu:慈しみ(メッター)の心で生きる修行僧は、
- Pasanno Buddhasāsane:仏の教え(ブッダサーサナ)を信じ、喜んで従い、
- Adhigacche padaṃ santaṃ:静けさの境地(涅槃)に至るであろう。
- Saṅkhārūpasamaṃ sukhaṃ:諸行(形成作用)の静まり=究極の安らぎの喜びを得る。
📘 用語解説
- 親切な行い(mettāvihāra):敵味方の区別なく、すべての生きとし生けるものに向ける無条件の慈しみ。
- わかち合い(dāna):物質的・精神的な善を他人と分かち合う実践。布施・共有・協力。
- 善いこと(kusala-kamma):身体・言葉・心の三つの領域における善業。誠実・清浄・利他が含まれる。
- 形成作用の静まり(saṅkhāra-upasama):心の動きや煩悩が鎮まり、完全な安らぎに至る状態=涅槃。
- 喜び(sukha):五感の快楽ではなく、内的な安心・安らぎ・満ち足りた状態。
🗣️ 全体の現代語訳(まとめ)
もし修行者が慈しみの心を持って行動し、
物や心を他者と分かち合い、日々善いことを実践するならば、
その人は、仏の教えの中で心が喜びに満たされ、
ついにはすべての苦しみを鎮めた静かな幸福に至るであろう。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「やさしさ」「分かち合い」「善行」という、日常における小さな実践が、最も深い安らぎと喜びにつながることを説いています。
現代社会では、競争・所有・孤立が当たり前の風景となっていますが、仏教は逆を教えます――
「与えること」「善くあること」「心をやわらげること」こそが、心を根本から癒し、最上の幸せを生むのだと。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
リーダーシップ | 部下や同僚に対して、威圧や命令でなく「親切・思いやり・共有」の姿勢で接することで信頼を築く。 |
チーム文化 | 成果を独占せず、ノウハウ・リソース・功績をチームで分かち合うことで、全体の力が高まる。 |
顧客対応 | 利益優先ではなく「相手のために尽くす姿勢」が、結果的に長期的な信頼と成果につながる。 |
社会的責任 | 社内外でのCSR活動や倫理的配慮を意識し、「他者のために役立つ善行」を企業文化に取り入れる。 |
🧠 心得まとめ(ビジネスパーソン向け)
「やさしさと分かち合いが、最強の成長戦略である」
人を蹴落として進む者は、孤独と不信に苦しむ。
だが、人に尽くし、分かち合い、善きことを積み重ねる者は、
静かに、そして確かに、内側から強くなる――そして喜びに満ちる。
この偈は、仏教の倫理と実践が、現代の人間関係や仕事の質にどう活きるかを、端的に示しています。
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