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まず人の無事を問う

── 物よりも、人を思いやる心が徳の礎となる

ある日、孔子の馬小屋が火事で焼けた。
その知らせが孔子に届いたのは、朝廷から帰宅された直後のことであった。
そのとき、孔子が最初に口にしたのは――
「人にけがはなかったか」という一言であった。
焼失した馬については、まったく問われなかった。

これは単なる言葉の順序ではない。
人命を第一に思う孔子の生き方そのものである。
所有物が焼けたことよりも、そこで働く人や関わった者たちの無事を気遣う――そこに、礼よりも先にある「仁」の心がにじんでいる。


原文とふりがな付き引用

「廏(きゅう)焚(や)けたり。子(し)、朝(ちょう)より退(しりぞ)きて曰(い)わく、『人(ひと)を傷(やぶ)るか』と。馬(うま)を問(と)わず。」


注釈

  • 廏(きゅう):馬小屋。家畜を飼う建物。
  • 朝(ちょう):政治の場。孔子が公務から戻った場面を表す。
  • 人を傷るか:けが人が出ていないかどうかを心配する言葉。
  • 馬を問わず:損害や財産よりもまず人命を重視した態度。
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