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■引用原文(日本語訳)
第二三章 象(三二〇)
戦場の象が、射られた矢にあたっても堪え忍ぶように、
われは人のそしりを忍ぼう。
多くの人は実に性質が悪い*からである。*「性質が悪い」:ここでは無思慮・軽率・悪意などを含む。
■逐語訳
- 戦場の象:戦において訓練された象。
- 射られた矢にあたっても:矢が当たっても(痛みを受けても)なお。
- 堪え忍ぶように:耐え、退かずにいるように。
- われは人のそしりを忍ぼう:私も他人からの非難・中傷に耐えよう。
- 多くの人は性質が悪い:世の中の多くの人は、思いやりに欠けた行動をとるものである。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
戦場の象 | インド古代では戦象は勇敢で忠実な象徴。痛みに耐えて進む存在。 |
そしり(謗り) | 他人からの中傷・非難・悪口。仏教では「口業(こうごう)」の一つ。 |
堪え忍ぶ(たえしのぶ) | 肉体的・精神的苦痛を、揺らがず受け入れて耐えること。 |
性質が悪い(人々) | 無思慮・嫉妬・怒り・無知から来る言動をとる人々のこと。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
戦場で矢を受けながらも勇敢に耐え、逃げずに立ち向かう象のように、私は人からの非難や中傷にも屈することなく、静かにそれを受け入れよう。なぜなら、この世には悪意や無思慮に満ちた人が少なくないからである。
■解釈と現代的意義
この節は、「内面の強さと静かな忍耐」の価値を説いています。
非難や中傷はどの時代にも避けられないものですが、真正面から受け止め、反応せずに耐える力こそが真の修行です。象のようにどっしりと構え、矢が刺さっても逃げない姿勢は、私たちの精神修養の理想像でもあります。
現代においても、SNSなどで簡単に批判や誹謗中傷が飛び交う中、「それに動じない心」を保つことは極めて重要な智慧です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
批判耐性の育成 | 上司・顧客・同僚などからの否定的な言葉に対して、即時に反応したり感情を露わにせず、冷静に受け止める訓練が必要。 |
リーダーシップ | 評価や意見が分かれる中でも、自らの方針を堅持し、周囲の雑音に振り回されない姿勢はリーダーの資質。 |
クレーム対応 | 顧客の厳しい言葉に対しても、動揺せず、感情を抑えて事実を聞き取り、改善に活かす姿勢。 |
メンタルヘルス | 周囲の言動に過敏になると心が疲弊する。象のように「揺るがぬ自己」を保つことが心の安定につながる。 |
■心得まとめ
「非難に動じず、自らの道を行け」
誰かに否定されることは避けられない。しかし、その声に心を惑わされることなく、ただ淡々と歩み続ける心の力こそが、真の強さである。
ビジネスにおいても、批判や嫉妬に直面しても、象のように重く、静かに、信念を持って歩む者が最終的に尊敬され、成果を得るのです。
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