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過去の数字を追うことは無意味ー未来を創る数字の使い方ー

多くの企業が日々膨大な量の数字を扱い、その分析やグラフ作成に労力を費やしている。しかし、それらの数字やグラフの多くは「過去」を基にしたものであり、本当に重要な「未来」に向けた指針を示しているわけではない。

過去の数字を研究することに終始し、それを「数字による経営」と信じて疑わない現状が広がる中で、果たしてそこからどれほどの価値が得られるのか。

本記事では、過去の数字に対する過剰な依存が抱える問題点と、未来に向けた新たな視点の必要性について考える。

目次

「経営分析」に潜む思い違い

多くの会社が膨大な量の数字を扱っているが、その大半は「過去の数字」に過ぎない。また、多くの会社が様々なグラフを作成しているものの、それらのほとんども「過去のグラフ」である。

企業経営において、過去の数字を確認することが習慣化している会社は多い。財務データや業績のグラフ、経営分析など、至るところで数字が「過去」を示している。しかし、それらが果たして未来への助けとなっているのだろうか。数字をただの「過去の記録」として扱うなら、それは過去の不手際と失敗を確認しているにすぎない。

「経営分析」と称される手法がある。多くの会社自身や金融機関、証券会社、経済紙、専門書、さらには投資育成会社などが、この手法を用いて数字を弾き出し、比率を計算している。しかし、それらのほとんどすべてが「過去の数字」に基づいたものである。

一体、過去の数字を見て何が得られるのだろうか……。この素朴な疑問を持ったことがない人が、あまりにも多いのが現実だ。

もちろん、過去の数字から分かることもあるし、その傾向を見れば、ある程度の判断や予測が可能であることは否定しない。

しかし、それだけで本当に十分なのだろうか。それ以上に一体何が分かるというのだろうか。過去の数字を分析し、その原因を探求して、一体何を成そうというのだろうか。過去を振り返るだけでは、未来への指針を得ることには限界があるのではないだろうか。

過去の数字がもたらす自己弁護の罠

過去の数字とは、「我が社の過去の不手際や失敗の記録」に他ならない。

しかし、それにもかかわらず、多くの場合、「この数字の原因はこうだ」「外部情勢が悪かったから仕方がない」といった具合に、自分の経営を正当化し、自分以外の何かに責任を押し付けるための自己弁護に終始してしまうのである。

また、そうでなければ、「こんな数字では困る。どうにかならないか」とただ困惑するだけで、具体的な対策が一切出てこない、という結末に陥ることが多い。

しかし、過去の数字を確認すること自体は必要である。

過去の数字を確認する目的は、その数字を研究することではない。

大切なのは、その数字を基にして「これからどうするか」を考えることである。

過去の数字は、どれほど研究しても、たった一円たりとも変えることはできない。それは明白な事実にもかかわらず、多くの人々が過去の数字の研究に懸命になり、それを「数字による経営」だと信じ込んでいる。

この思い違いが、なぜこれほどまでに広まっているのだろうか。

「過去の数字を見るのはなぜか?」と自問する人は少ないが、事実、いくら研究しても過去の数字そのものを変えることはできない。

むしろ、数字を確認する目的は、「これからどうするか」を考えるためにあるべきである。過去は変わらないが、未来は決まっていない。だからこそ、過去に何を学び、未来にどうつなげるかが重要であり、過去に執着していては新しい未来を築くことはできない。

確認のための数字と行動の出発点

かく言う私も、会社を支援する際には、その会社の決算書には目を通す。しかし、その時間はせいぜい数分程度に過ぎない。

そして、それは研究ではなく「確認」に過ぎない。現実を確認し、その上で次の行動を始めるための出発点として見るだけである。

重要なのはこの点だ。過去の数字を追いかけても、そこから得られるのは、ごくわずかな情報に過ぎない。我が社の未来を築くために本当に必要な情報は、ほとんど得られないのである。

論より証拠。私が支援に伺う社長の多くは、我が社の将来に対する明確な方向性や目標を持っていない。彼らは、「我が社の将来はどうなるのか」「どうすればよいのか」といった悩みを抱え、不安や迷いを感じている。

会社を経営している社長の多くが抱える悩みには、「未来に対する不安」や「方向性の欠如」がある。過去の数字はそうした不安や迷いに対して何の解決策も提供していない。

むしろ、現実の確認のみにとどまり、未来を築くための道筋は過去のデータからは得られないことが多い。

過去の数字は、こうした社長の疑問や悩みに対して、何の解答も与えることができていないのである。

未来設計に必要な視点転換

将来に向けて具体的な指針を与えることのない過去の数字は、現実の確認以外には、せいぜい税務署への対応や外部報告のための資料としての役割しか果たさない。

私たちが自社の未来を設計する際にまず必要なのは、過去と決別し、新たな視点で未来を見据えることである。

したがって、過去の数字は「確認」として位置づけ、未来を設計するための新たな視点や戦略に目を向けることが大切だ。

まとめ

過去の数字は現実を確認するための出発点にはなるが、それ以上の価値を見出すことは難しい。未来を切り開くためには、過去にとらわれるのではなく、その数字を基に「これからどうするか」を考え、具体的な行動を起こすことが必要である。

多くの社長が抱える「将来への不安」に、過去の数字は何の解答も与えていないのが現実だ。我が社の未来を設計する際には、過去と決別し、新たな視点で前進することが求められる。未来を見据える力こそが、経営において真に重要な要素である。

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