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融手社長
話のついでに、もう一つ呆れたエピソードを紹介しよう。T社を訪問した際のことだ。試算表を見ていると、「金融手形」という科目が目に入った。妙な項目だと思い、念のため社長に尋ねると、それは「融手」だという。驚いたのは、試算表に堂々と「融手」を記... -
パテント社長
卓越した発明の才能を持ちながらも、経営のセンスは皆無に近い。それどころか、常識を欠いていると言っても過言ではない。たとえば、出張や会食をしても領収書を残さないといった具合だ。 経理担当者が「領収書をもらってこないと経費で処理できない」と訴... -
社宅社長
S鉄工の社長は、創業者として一代で会社を築き上げ、デッチ奉公から身を起こして業界トップの企業に成長させた人物だ。その手腕と情熱は見事で、個人的に非常に尊敬している経営者の一人だ。 背は高く、肩幅が広く、その姿はまさに偉丈夫そのものだ。目に... -
大学卒業と同時に社長にする
大学を卒業するタイミングで社長に就任したL氏は、二人兄弟の長男だ。もっと正確に言えば、自らの意思で社長になったわけではなく、父親によってその座を押しつけられた形だ。会社は三つの事業を抱えており、一つはそこそこの成績を残しているものの、もう... -
七光りだけでは
T工業の社長から、息子である専務を教育してほしいとの依頼を受けた。年齢を重ねる中で疲れを感じ、会社を息子に譲りたいという意向だ。しかし、現状では経営を任せるには不安があるため、経営者としての道を指導してほしいとのことらしい。自分にその役... -
F電化
F電化の社長は、後継者に対する考え方、もっと具体的には自分の息子について、以下のように考えている。息子を社長にしたいという思いは、親としての自然な感情だ。ただし、それは息子自身が社長としての資質を備えている場合に限る。息子にその資質があ... -
青年部会
東京都のK工業協同組合には青年部会という組織がある。ここに集まるのは、いずれ会社を背負って立つ「次世代の経営者候補」たちだ。肩書きを見れば、副社長、専務、常務といった立場の人物が多く、まさに経営の実務を学び、深めるための研究グループだ。年... -
二世の皆様ヘ
この章を読んで、どのような感想を抱いただろうか。社長の息子として幼い頃から不自由のない生活を送り、常に周囲の人々から「社長の坊ちゃん」として特別視されてきた。 自分では気づかないうちに、わがままでどうしても思いやりに欠けがちになる。たとえ... -
社長は何をする人ぞ
「社長は何をすべきなんでしょうか」。初めて顔を合わせたS社長から、突然こんな問いを投げかけられた。S社長は、約1年前に現会長から指名されて社長に就任し、それ以来がむしゃらに走り続けてきた。しかし、会社には多額の累積赤字がのしかかり、資金繰り... -
社長自身を動機づける
F社の社長であるS氏は、経営への意欲をほとんど失いかけていた。病気の影響で約1か月半の入院を余儀なくされ、その間を含む約2か月間、会社の経営に直接関わることができなかった。その結果、業績は悪化し、赤字に転落していた。 父親から業績不振の会社を...