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師を残して、弟子が先に死ねようか
命の危機の中でこそ、師弟の絆が試される 孔子が匡(きょう)の地で、誤解から兵士たちに包囲され、命の危機にさらされたことがあった。この混乱の中、愛弟子の顔淵(がんえん)は一行とはぐれて行方不明になってしまう。 やがて、顔淵が遅れて追いついて... -
性格に応じて導く、それが本当の教え
同じ問いに違う答え――孔子の教育は“人を見て法を説く” 子路(しろ)が孔子に尋ねた。「良いことを聞いたら、すぐに実行すべきでしょうか?」 孔子はこう答えた。「君には父兄がいる。どうして彼らの意見も聞かずに、すぐ行動してよいだろうか」 次に、冉有... -
言葉が立派でも、心まで立派とは限らない
語ることと、真に優れていることは別の話 孔子はあるとき、弟子たちにこう語った。 「言葉が立派で、論じる内容がもっともらしいというだけで、その人を“君子”だと決めつけてはならない。その人物が本物の君子なのか、それとも見かけだけを装った“色荘(し... -
善良さだけでは、道の奥にたどりつけない
生まれつきの良さは尊いが、それを磨いてこそ真の高みへ 弟子の子張(しちょう)が孔子に尋ねた。「生まれつき性質の良い“善人”は、どのような道を進めばよいのでしょうか」 孔子はこう答えた。 「善人は、そのままでも大きな過ちを犯すことはないだろう。... -
天命に従う者と、自ら動く者――どちらも道に生きている
理想に生きる顔回、行動して富を築く子貢――孔子はどちらも認めていた あるとき孔子は、弟子の**顔回(がんかい)と子貢(しこう)**の違いについて語った。 「顔回は、理想に近い人物だ。たとえ何度も食糧が尽きるような貧しい状況でも、それを天命として... -
欠点を知ることは、その人を育てる出発点
短所を認めつつ、可能性として受け止めるまなざし 孔子はあるとき、4人の弟子について率直な評価を口にした。 **柴(し:子羔)**は、愚直すぎる。正しさを重んじるあまり、柔軟さに欠ける面がある。 **参(しん:曾子)**は、几帳面で誠実だが、ややのろ... -
正義を曲げてはならぬ――弟子でも厳しく戒める
富や権力に迎合した者は、たとえ弟子でも許さない ある日、孔子は怒りを込めてこう語った。 「魯(ろ)の権臣・季氏(きし)は、主君である魯公(ろこう)の祖・周公(しゅうこう)よりも富を持っている。それにもかかわらず、我が弟子の冉求(ぜんきゅう... -
極端に走れば、それもまた未熟
行き過ぎも、行き足りなさも、どちらも中道を欠くということ 弟子の子貢(しこう)が、孔子にたずねた。 「師(し:子張)と商(しょう:子夏)では、どちらが優れていますか?」 孔子はこう答える。 「師は行き過ぎるところがあり、商はやや足りないとこ... -
才能はある、しかし完成にはまだ至らず
弟子の成長を段階的に見極め、導く師の眼差し あるとき、孔子は弟子の子路(しろ)の楽器の演奏についてこう評した。「由(ゆう:子路)の瑟(しつ)の演奏には、まだその剛強な性格がそのまま表れていて、私の門で奏でるにはふさわしいところまで届いてい... -
寡黙でも、言えば核心を突く者
言葉少なくして、まさに的を射る――それが本物の見識 魯(ろ)の国の役人たちが、新しく「長府(ちょうふ)」という倉庫を建てようとしていた。それを耳にした閔子騫(びんしけん)は、静かにこう言った。 「古いものを活用すればいいではないか。何もわざ...