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志をもって生きる、それが「士」である
――恥を知り、使命を果たし、成すべきを成す人に 弟子の子貢(しこう)が孔子に問う――「どんな人を“士”(し)と呼ぶのですか?」 孔子は明快に答えた。「自分の行いに恥じることなく(向上心と責任感を持ち)、どこへ使わされても君命を辱めずに任務を遂行... -
慎み・真面目さ・まごころを携えて、どこにいても仁を行う
――どこへ行っても、自分の徳を置き去りにするな 弟子の樊遅(はんち)が、孔子に「仁(じん)」とは何かをたずねた。孔子は具体的な3つの徳目で答える。 「家でくつろいでいても慎みを持ち(恭)、仕事にあたるときは真面目に集中し(敬)、人と接するとき... -
人情にかなう「正しさ」こそ、本当の正直
――法と倫理のはざまで、情が導く“直”のかたち 楚(そ)の地方長官・葉公(ようこう)が孔子に語った。「私の領内に正直者として有名な者がいます。あるとき、その者の父親が羊を盗んだのですが、息子はその罪を証言しました」と。 この話を聞いた孔子は、... -
急ぐな、小利に迷うな――大きな道を見失わないために
――真の政治とは、遠くを見てゆっくり歩むこと 孔子の弟子・子夏(しか)が、魯国の**莒父(きょほ)**という地方の長官となり、政治のやり方を孔子にたずねた。 そのとき孔子は二つのことを戒めた。 「あわてるな。小さな利益に惑わされるな。」 急ぎすぎ... -
よい政治とは、近くを喜ばせ、遠くを惹きつけること
――内にも外にも、人の心を動かす統治が理想 楚(そ)の地方長官である葉公(ようこう)が、孔子に政治のあり方を問うた。孔子は、それに対して明快に、しかし深い含意をもってこう答えた。 「近くの人々が喜び、遠くの人々がやってくる――それがよい政治で... -
一言が国を興し、一言が国を滅ぼす
――言葉の力を侮るなかれ 魯の定公(ていこう)が孔子に問うた――「たった一言で国を盛り立てるような言葉はあるか?」 孔子は、「言葉はそこまで単純なものではない」と前置きしつつも、世に伝わるある格言を引用して答えた。「君たることは難しく、臣たる... -
公(おおやけ)と私(わたくし)を混同するな
――政治は国家のものであり、一族のものではない 冉子(ぜんし/冉有)が季氏(きし)の朝廷から戻ってきたとき、孔子は「なぜこんなに遅くなったのか」とたずねた。冉子は「政(まつりごと/政治的な用事)がありました」と答える。 しかし孔子は即座に見... -
己を正せぬ者に、人は導けない
――政治の原点は、自分自身にある 孔子は、為政者にとって最も基本となる資質を「身を正すこと」だと説いた。自分自身の行いが正しければ、政治を行うことなど難しいことではない。しかし、自分を律することすらできなければ、どうして他人を導き、世を治め... -
本当に良い政治も、花開くには三十年かかる
――徳を広めるには、時と根気が要る 孔子は、たとえ天から命を受けた理想の王――つまり「王者(おうじゃ)」――が現れたとしても、その仁(じん)、すなわち人への思いやりや道徳を社会に行き渡らせるには「一世代」――すなわち三十年の時間が必要だと語った。... -
善なる政治が続けば、刑罰はいらなくなる
――徳による統治は、時間をかけて社会を変える 孔子は、古くから伝わる言葉を引き合いに出して、深い賛同の意を示した。「たとえ高度な学問や能力がなくとも、“善人”が百年にわたって政治を行えば、人を殺さなければならないような大罪――つまり重罪――をこの...