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世俗の誘惑から離れたとき、人は真に高みに至る
特別な偉業を成し遂げなくても、名誉や利益といった世俗の欲望を払い除けることができれば、それだけで一流の人物に数えられる。学問を深めるにあたり、特別に知識を増やさずとも、世俗的な執着から自由になれれば、それはすでに聖人の境地である。人の価... -
幸せは、少し譲ることで深まる
細く狭い道を通るとき、混雑していれば、自分が一歩よけて人に道を譲る。おいしいものを分け合うとき、自分の取り分を少し減らして他人に譲る。このようなささやかな「思いやり」の積み重ねが、人生を安らかで幸せなものにしていく。自分の幸福だけを追い... -
今を広く生き、あとに豊かさを残す
人生を生きている間は、心を狭くせず、できる限り広く開いておくことが大切である。そうすることで、人々が不満や不平を口にすることなく、穏やかに過ごせる環境を生み出せる。そして、自分がこの世を去ったあとにも、心の恵みや影響が長く流れ続けるよう... -
質素な暮らしが、志と節操を守る
普段から粗食に満足している人は、心が氷のように清らかで、玉のように潔い。それに対して、美食や贅沢ばかりを求める人は、やがて権力者や地位ある者に媚びへつらい、自分を安売りするようになる。人の志は、淡泊で節度ある生活によってこそ輝きを放ち、... -
順境には慎みを、逆境には希望を
得意の絶頂にあり、運や人の恩に恵まれているときこそ、思わぬ災いが起こりやすい。だからこそ、好調なときには早めに頭を冷やし、自らを戒めて心を引き締めることが大切だ。一方、失敗が続き心が挫けそうなとき――実はその先にこそ、反転して成功が生まれ... -
静寂の中でこそ、本当の自分に出会える
夜が更け、あたりが静まりかえるとき――独り坐り、心の奥を見つめれば、雑念や妄想が次第に薄れ、本来の純粋で澄んだ心が静かにあらわれてくる。この沈思黙考の時間の中で、自在な心の働きの可能性に気づき、同時に、邪念を完全には消せない自分にも気づか... -
静かに備え、静かに動く ― 平常心こそ最上の生き方
天地は静かに見えて、その内では陰陽の気が絶え間なく働いている。日と月は昼夜を問わず休まず進みながらも、その動きは常に正確で明らかだ。これに倣い、君子は平穏なときにも心を引き締めて油断せず、多忙や混乱の中にあっても、慌てず騒がず、ゆったり... -
本物は淡く、目立たず、しかし深い
濃い味の料理は、素材をごまかしてしまい、真の味とは言えない。本当にうまい料理は、むしろ淡く、素材の持ち味を活かしたものだ。人もまた同じで、本物の人物は目立つでもなく、奇抜でもなく、あくまでも自然で、平凡な姿をしている。見た目や才能の派手... -
喜びのない一日は、自然にも人にもあってはならない
嵐の中では、鳥でさえ怯えて縮こまっている。晴れた日、やさしい風が吹けば、草木も生命力にあふれて喜びに満ちている。このように、天地自然のあいだにも、常に「和らぎ」が必要なのと同じように、人の心にも、毎日欠かさず「喜び」と「楽しさ」が宿って... -
苦言と苦難こそ、徳を磨く砥石
人は日々、耳に痛い忠告や、心にひっかかる出来事によって、徳を磨き、成長する。これらは人生における「砥石」であり、自分を研ぎ澄ます機会である。反対に、褒め言葉ばかりを浴び、何もかも思い通りに進んでいる状態は、猛毒の中に身を置くようなもの。...