-
心は「空」であり「満ちている」——この両立が人格を高める鍵となる
人の心は、先入観や邪念で満たしてはならない。常に柔らかく、空っぽであるようにしておくことが肝要である。そうすることで、義理――すなわち正しい道理や教えが、自然と心の中に入ってくる。 しかし同時に、心は「中身がない状態」であってはいけない。む... -
苦しみと喜びを経て得た幸福こそ長く続き、疑いと信を往還して練られた知恵こそ本物となる
人は、苦しみや試練を経て、喜びにたどり着く。その一つひとつの経験を丁寧に積み重ね、練り上げるようにして得た幸福こそ、一時的な快楽ではなく、長く心に根を張る「本当の福」となる。 同じように、知識や知恵も、ただ情報として耳に入れただけのもので... -
真理の道は広く晴れやか、欲望の道は狭く苦しみに満ちている
「天理(てんり)」——すなわち真理にかなった道は、非常に広く、明るく開けた世界である。ほんの少し心をそこに向けてみるだけでも、内側からのびのびとし、胸が広々として、晴れやかな気持ちに満たされる。 それに対して、「人欲(じんよく)」——欲望に支... -
心が温かい人には、自然と福が集まる——優しさは天が報いてくれる
自然界では、暖かい季節に万物が芽吹き、冷たい季節にすべてが枯れ落ちる。人の世界もそれと同じで、心が冷たく、思いやりを欠く人は、天から受ける幸せもまた薄く、はかないものとなってしまう。 一方、和やかな雰囲気を持ち、温かい心で人に接する者は、... -
成功しても騒がず、失敗を見越して控えめに——君子は目立たぬ慎みの中にある
たとえ10の言葉のうち9つが的確であっても、人々はそれを「特別に優れている」とは思わない。しかし、1つでも誤れば、即座に非難が集中する。 10の計画のうち9つが成功しても、功績として称賛されるとは限らない。だが、たった1つの失敗で、あらゆる批判が... -
幸福は求めるものではなく、呼び込む準備をするもの
幸福とは、こちらから積極的に追いかけて手に入れるものではない。むしろ、日頃から「喜びの心」を大切に育て、明るく朗らかな気持ちを保つことによって、自然と福が向こうから訪れてくるようになる。 同様に、不幸というものも、自力で完全に避けることは... -
激しさ・冷たさ・かたさは、人も物事も枯らしてしまう
気性が激しく、落ち着きのない人は、燃えさかる火のような存在である。その炎は、自分の周囲にいる人々をも巻き込み、焼き尽くしてしまう。 また、思いやりが乏しく、感情の温もりに欠ける人は、氷のように冷たく、人に触れるたびにその生命力を削いでしま... -
運命の揺さぶりを、心の修練ととらえる者に、天も及ばない
天の働き(運命のからくり)は人智では測れない。持ち上げたかと思えば抑えつけ、伸ばしたかと思えば再び抑える——その不可思議な流れは、英雄すら翻弄し、豪傑をも打ち倒す。 だが、真に志ある君子は、たとえ逆境に遭っても、それを運命の悪戯とは思わず、... -
真の善は、見返りや称賛を求めない——知られたい心に悪の芽は潜む
たとえ悪事を働いたとしても、それを「人に知られたくない」と思う心があるなら、そこにはまだ良心が残っており、善へと向かう可能性が残されている。羞恥心や後悔の念は、やがて改心へと導く「善路(ぜんろ)」の入り口になりうる。 一方で、善行を行いな... -
名誉や地位を超えたところにこそ、最も真実の幸福がある
人は名誉や地位を得ることを「喜び」と感じる。だが、そうした名や位とは無縁であることこそ、より深く、静かで、本物の喜びをもたらしてくれることを知らない。 人は飢えや寒さを「不幸」として恐れる。だが、実際には、何不自由のない生活を送っている者...