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心を養うなら、語るに値する人と、語るに値することを
町の賢しらな人と付き合うよりも、山の静かな老人と語らうほうが心が休まる。権勢ある家の敷居を踏むより、親しい友人の粗末な家に立ち寄るほうが心は通う。くだらない噂話に耳を傾けるより、きこりや牧童が口ずさむ素朴な歌に耳をすます方が、むしろ心に... -
引き際は盛んなときに、施しは見返りを求めずに
職を辞するなら、惜しまれるほど全盛のときがよい。そうすれば潔さが際立ち、後味も美しい。また、身を置く場所は、人と競う必要のない、誰も行きたがらないような静かなところが望ましい。徳を大切にするなら、ほんの些細なことにも慎み深くあらねばなら... -
才能も熱意も、徳がなければ一流とはいえない
節義が高潔で、大臣に匹敵するほどに立派に見えたり、文章が古代の名曲「白雪」を超えるほどに華麗だったとしても、それが徳によって磨かれたものでなければ、ただの一時の勢い、または表面的な技芸にすぎない。 真に世の中で価値あるものと認められるには... -
急がず、待てば自ずと道はひらける ― 焦りは害、寛容は力
物事は、急いだからといってすぐに答えが出るとは限らない。むしろ、時間を置いてゆっくり構えることで、自然に明らかになることもある。また、人を動かそうとしても、強引にすればかえって反発を生む。放っておけば、やがて自ら動くこともあるのだ。 怒り... -
小さな油断が大きな禍を招く ― 細部にこそ心を尽くせ
たった一度の軽率な思いつきや、無意識のひと言、何気ない行動が、思いがけない大きな禍を引き起こすことがある。それは、目に見えない神仏の怒りを買い、天地の調和を乱し、時には子孫にまで災いを及ぼすことさえあるという。だからこそ、どんなに小さな... -
“清さ”も“楽しさ”も、取り繕うことではなく、取り除くこと
心を乱すものを消せば、自然と澄み、自然と楽しくなる。 水は、波さえ立たなければ自然と静まり、鏡も、ほこりや翳りがなければ、自然と明るく物を映す。 人の心も同じで、無理に清くしようと気張らなくても、濁らせる原因(欲、執着、煩悩)を取り除けば... -
人に誠実さがなければ、信はなく、気転がなければ、どこへ行ってもぶつかるだけ
人として生きるには、少しでも“誠実さ(真懇)”が必要である。それすらなければ、世間から離れ、誰からも信頼されない「もの乞い(花子)」のような存在になってしまい、その人の行動すべてが空虚で意味のないものになる。 また、社会の中を生き抜くには、... -
巧みに仕掛けても、仕掛けの上には仕掛けがある
人の智恵(ちえ)や策略(さくりゃく)は、あてにはならない。 魚を捕らえるために仕掛けた網に、**思いがけず大きな雁(鴻)**がかかるように、自分が仕組んだつもりの仕掛けにも、予想外の結果がついてくることがある。 また、獲物を狙うカマキリ(螳蜋... -
変わる世の中にあっても、変わらぬ「気節」を守る
事業も名誉も移ろうが、意気と節操は千年残る。 どれほど偉大な**事業や文章(学問・教養)であっても、その人の肉体が滅びれば、やがて消え失せる(銷毀)**ものだ。 また、どれほど高い地位や名誉、財産を築いたとしても、それらは時代の流れとともに他... -
自分を省みる人は、すべてを糧にして進化する
人を責める人は、すべてを凶器に変えて衰えていく。 自分を反省できる人は、どんな経験や失敗に出会っても、**それを自分を高める「薬石(やくせき)」**とすることができる。 反対に、人のせいにばかりして他人を責める人は、どんな思考・感情も、**やが...