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正しさを振りかざせば傷つく、静かに温かく生きるのが最上である
節義や主義を声高に掲げる人は、その節義によってかえって人に批判されやすい。学問や道徳を売り物にする人は、むしろその道徳を口実にして責められることが多い。 だからこそ、君子(徳のある人物)は、悪に染まらず、しかし善名を立てようともしない。た... -
要職にある者は、正しさと親しみを備え、悪人に近づかず毒に刺されるな
士君子(しのくんし)――すなわち品位ある人物が、権力を持つ立場や重要な職務に就いたときには、まずその行いを厳格かつ明確に保つことが求められる。どこまでも公明正大に仕事を進めるべきである。 同時に、人と接する際には、和やかで柔和な心持ちを忘れ... -
検討は客観的に、実行は当事者として――役割に応じて心を切り替えよ
物事を議論・検討するときは、自分の立場を一度外に置き、あたかも第三者のような目で「利害得失」を冷静に、十分に考えるべきである。しかし、その案件を実際に遂行する立場に任じられたならば、もはや利害得失の思案を引きずるべきではない。すでに決ま... -
心を静め、目を澄ませ――無事にも有事にも揺れない心を持て
何も問題が起こらず、日々が平穏であるとき、人の心はつい緩み、ぼんやりと曇りがちになる。こういうときこそ、心を落ち着かせつつも、目はすっきりと澄ませて、物事の本質を見失わないようにしたい。 一方で、突発的な出来事や問題が起きると、心は浮き足... -
心は宇宙そのもの――喜怒哀楽もまた自然の一部
人間の心は、まるで天の運行や宇宙の秩序のように、さまざまな感情が絶えずめぐりゆく小さな宇宙である。 一念の喜びは、天に輝く吉兆の星やめでたい雲のようなもの。一念の怒りは、雷鳴とどろき、雨風激しい嵐のようなもの。一念の慈しみは、穏やかなそよ... -
思いやりの心は、人として生きる証である
「ネズミのためにご飯粒を少し残す」「ガ(蛾)が飛び込んでこないように灯をともさない」――昔の人は、そんなささやかな行いに、命あるものすべてを思いやる心を込めていた。 こうしたほんの一点の優しさは、私たち人間が他の命とともに生きるうえで最も大... -
人が敬うのは地位と装い、人が侮るのも見かけにすぎない
もし自分が高い地位に就けば、人々は持ち上げてくれるだろう。だが、それは自分自身を敬っているのではなく、高位高官の礼服(峩冠大帯)という「装い」を敬っているにすぎない。 逆に、自分が低い身分にあれば、人々は軽んじてくるかもしれない。しかしそ... -
心を空にし、意識を澄ませば、本当の自分が現れる
心が空(から)で静まっていれば、雑念が取り払われ、本来の自分=本性が自然と姿を現す。しかし、心がざわついたままで「自分を知ろう」としても、それは波立つ水面をかき分けて月の姿を探すようなものであり、見えるはずがない。 また、意識(心のはたら... -
恩は徐々に厚く、威はまず厳しく――人の心を動かす順序の知恵
人に恩恵を施すときには、最初は控えめにして、後から少しずつ厚くしていくのがよい。最初に大きく施してしまい、後で減らしてしまうと、人はその恩をすぐに忘れ、感謝の念も薄れてしまう。 逆に、人に対して威厳を示す必要があるときには、初めに厳しくし... -
本物の非凡は自然体にあり、奇をてらえばただの偏屈になる
本当に非凡で優れた人とは、自然に俗世を超越している人である。しかし、わざと人と違うことをして目立とうとする者は、奇才ではなく、ただの変人にすぎない。 また、世間と関わりながらも、その俗っぽさや汚れに染まらず、心の清らかさを保っている人こそ...