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華やかさに惑わされず、枯れの中に真実を見よ
春の華やぎは美しい――けれどそれは、天地が一時見せる幻にすぎない。花が咲き乱れ、鶯がさえずり、山や谷が彩られる季節には、本当の姿はまだ隠されている。晩秋になり、花は散り、木々は葉を落とし、岩や崖があらわになったとき、ようやく天地の本来の姿... -
能力を誇るより、本性を保つ無為の境地を
釣りや囲碁といった一見高尚な趣味にも、裏には欲や争いの気配が潜んでいる。心を清らかに保ち、穏やかに生きたいなら――何かを成すことより、成さぬことに価値を見出すべきである。人より多くの才を持っていると誇るより、何もできなくても自分の本質を失... -
自然を語るときに俗が漏れるなら、まだ心は俗世にある
都会を離れて自然に暮らす――その選択は清らかでも、語り方に執着が残っていれば、まだ本質には達していない。田舎暮らしの魅力をしきりに語る人は、逆説的にその新鮮さに心を奪われている。名誉や利益を否定しながらその話をやめられない人もまた、欲望の... -
静けさの中にこそ、人生の真実と人間の本質がある
人生とは、ときに大波小波が押し寄せる波乱万丈の道である。激しい風や荒れる海のように、運命に揺さぶられる場面もある。しかし、そんな人生にもやがて訪れるのが、風のやすらぎ、波の静けさ――つまり、心穏やかなときである。 このような安らぎの中でこそ... -
一時の華やかさより、静かに長く続くものを尊べ
桃やすももは春に美しく咲き誇り、その花も実も見る者・味わう者を楽しませる。しかしその華やかさは一瞬で、花はすぐに散り、実もまた傷みやすい。 一方、松や柏は一年を通じて青々とし、その強靭さと節度ある美しさは、移ろいに揺らがぬ「堅貞(けんてい... -
態度にこそ人柄が表れる──真の君子は場面ごとに心を律する
**君子(くんし)**とは、外見や言葉でなく、どんな状況でも一貫して節度と品格を保つ人である。 たとえば苦難や災難に遭ったとき、多くの人は取り乱したり嘆いたりするが、君子は冷静さを失わず、平然と状況を受け入れて対処する。その心には、どこか泰然... -
若者は未来の器──心して鍛え、よく育てよ
子どもや若者は、将来の社会を担う「大人の胚胎(はいたい)」であり、まさに未来の宝物である。特に才能に恵まれた者は、やがて指導者として世に立ち、他を導く存在となることが期待されている。 しかし、その才能を活かすためには、若いうちからの「しっ... -
他人には公正な目を、自分には厳しい目を
誰かの過失を責めるとき、ただその失敗だけを指摘するのではなく、その人の中にある良い点、評価すべき点も併せて見て伝えることが肝要である。そうすれば、責められた相手も納得し、不平を抱くことなく、素直に受け入れやすくなる。 一方、自分自身を省み... -
口は心の門、意識は心の足──守るべきは言葉と想念の方向
口というものは、心の内にある思いや秘密が外に出る「門」である。だからこそ、口を慎まず、言葉を軽んじるならば、大切な真意や秘めた思考を、知らぬ間に漏らしてしまう。不用意な言葉は、信頼を損ない、機会を失わせる危険を伴う。「沈黙は金」という言... -
知ったつもりが最も危うい──中途半端な才知の落とし穴
真に悟りに至った人物――「至人」は、あらゆる偏見や思い込みから自由であり、物事を平静かつ客観的に見つめることができる。こうした人とは、学問を論じるにも、事を成すにも気持ちよく取り組むことができる。 一方で、まったく知識や理解のない「愚人」も...