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喧噪も静寂も、栄枯も超えて――どこにいても、自分にとっての天地がある
世俗を離れ、静けさを愛する人は、白雲が流れるのを眺め、幽玄な石に心を寄せて、そこに“玄(げん)”――宇宙の深遠なる理(ことわり)を感じ取る。 一方で、栄華を求める人は、清らかな歌や優雅な舞に心を奪われ、飽くことを知らずにその楽しみに浸る。 だ... -
名声より風格を、忙しさより余白を
名声を得ようとする努力や誇りも、世俗的には立派に見えるかもしれない。だが、それを巧みにかわし、あくせくせずに生きている人には、人間的な“趣(おもむき)”や“深み”において到底及ばない。 また、多くのことをこなして物事を成し遂げるのも素晴らしい... -
足るを知る者は、王侯よりも豊かに生きる
欲の深い人間の欲望には、終わりがない。金を得ても、今度は玉を得られなかったことを嘆き、公爵に封ぜられても、諸侯(=領地持ち)になれなかったと不満を抱く。 このように、地位も財産も手に入れた人間が、心の中では物乞いのように飢えている――それが... -
進むばかりが勇気ではない――退く備えもまた賢明である
何かを始めるとき、進むだけでなく「退く判断」ができるかどうかが、その後の運命を分ける。 前に進もうとする際には、**「もし問題があれば一歩退く」**という余地を持っておけば、角を垣根に突っ込み動けなくなった雄羊のように、立ち往生する禍(わざわ... -
外の状況を変えられなくても、心が変われば世界が変わる
暑さがつらいとき、気温そのものを下げるのは難しい。だが、「暑い」「つらい」と感じている心――その“熱悩(ねつのう)”を除くことができれば、まるで清涼台(せいりょうだい)に座しているかのように、涼しさと落ち着きを感じられるようになる。 同じよう... -
世のなかにあっても、道を守れば心は乱れない
世俗を離れて山林に暮らせば、人との関係に起因する「栄誉」や「恥辱」といった煩わしさから解放される。だが、たとえ都会の中、世のど真ん中で生活していたとしても――もし自分の中の「道義(どうぎ)」をしっかりと守り、誠実に生きているなら、他人が冷... -
混乱の中でも平静を保つには、静かなときに心を養うべし
忙しく慌ただしいとき、本性を乱さず冷静でいたいのなら――それには、普段から心を清らかに整え、精神を養っておく必要がある。 また、死の間際に取り乱さず、穏やかに終わりを迎えたいと願うなら、生きているうちに、物事の本質や人生の理(ことわり)、生... -
一歩退けば道はひらけ、味を控えれば長く楽しめる
人より先に出ようとすれば、道は狭くなり、ぶつかりやすくなる。しかし、そこで一歩引いて後ろを歩けば、その分だけ道は広くなり、安全でゆとりあるものとなる。同様に、どんなに美味な食事も、あまりに濃厚で華やかであれば、すぐに飽きてしまう。だが、... -
静かな自然のなかに、風流と満足を見いだす
松の谷川沿いを、杖をついて一人ゆっくりと歩く。ふと立ち止まって見上げれば、破れた僧衣の肩に、雲がまとわりつくような幻想が生まれる。竹の茂った窓の下で、書を枕に横になってひと眠り。目覚めてみれば、月の光が、古くて粗末な敷物に淡く差し込んで... -
死を想えば、欲も冷め、道心が深まる
情熱が燃え上がるときは、自分が病に倒れたときのことを思い出す。名誉や利益が甘く感じられるときは、自分の死の瞬間を思い浮かべる。そうすれば、燃えさかる欲望は冷えた灰のように静まり、飴のように甘い功名も、噛みしめる蝋のように味気なく感じられ...