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手段に執着せず、目的を見失わない
悟った人とは、手段と目的の違いを深く理解している人である。たとえば、いま筏に乗ったばかりでも、もうすでに「目的地に着いたらすぐに筏を降りよう」と心の準備をしている人。彼は、筏があくまで渡るための道具にすぎないとわかっている。 これに対して... -
視野を広く、自分の愚かさを見つめなおす
晴れた空に明るい月が出ている。どこまでも飛んで行ける広い世界が広がっているのに、蛾は自ら進んで、まばゆい灯火に飛び込み、焼かれてしまう。 清らかな泉が湧き出し、青々とした草が茂り、さまざまな飲み物や食べ物に恵まれているのに、ふくろうはわざ... -
栄誉も屈辱も超えて、静かに、自由に生きる
名誉を得ても、恥を受けても、心を乱さずにいられること。それはまるで、庭先に咲いては散る花を、ただ静かに見つめているような心のあり方である。 地位や立場にとどまるか、そこから離れるかも気にしない。それはちょうど、空に浮かぶ雲が、巻いたり伸び... -
栄華も滅びも移ろうもの ― 永遠ではない
壊れた石畳に狐が眠り、草の生えた荒れた台地を兎が駆けまわる。そこはかつて、歌や踊りが盛んに行われていた華やかな場所だった。今はただ、露が野菊に冷たく降り、霧が枯れ草に漂っている――ここもまた、かつて激しい戦いが繰り広げられた古戦場である。 ... -
自然と一体となって、のびやかに生きる
魚は水を得て自由に泳ぎ、鳥は風に乗って自在に飛ぶ。だが、魚も水の存在を忘れ、鳥も風の存在を知らない。このように自然と調和している生き物の姿から学べば、私たち人間も、地位・名誉・財産・人間関係などの煩わしさを超越し、天地の理にかなった、本... -
人は皆、自由で素朴な生き方に心を動かされる
――なぜ“本性に合った暮らし”を選ぼうとしないのか? 威厳ある冠と帯を身につけた高官も、ふと道で簔(みの)と笠をつけた、自由に風に吹かれて生きる庶民の姿を見れば、その心に**うらやましさ(咨嗟)**が芽生えることがある。 長い宴席に豪勢な暮らしを... -
心が静かなら、世界はすがすがしい
――揺れぬ心は、どこにあっても青山緑樹のごとし 心に風や波が立たなければ、たとえ喧騒の中にあっても、そこはまるで青い山と緑の木々に囲まれた静寂の世界のように感じられる。 天から授かった「性(せい)」――本来の天性が、万物を育てるような温かさを... -
都は滅び、命は尽きるのに、人は争いと欲望をやめない
――それでもなお剣を握り、金に執着する人の心の浅さ かつて栄えた西晋の都は、今や草木が生い茂るだけの廃墟となっている。それを目の前にしても、人はなお剣(武力)を誇り、戦いをやめようとはしない。 自分の体は、いずれ洛陽北邙の墓地に埋められ、狐... -
自然は、心で味わう音楽であり、絵画である
――人工を超えた、天地の“鳴佩”と“文章” 林の奥から聴こえる松風の音、石の上を滑る泉の流れの響き――これらを**静かな心で聴いていると、**それがただの自然音ではないことに気づく。**それは、天地が奏でる最上の音楽「鳴佩(めいはい)」**である。 また... -
風が吹いても、水が揺れても、心は静かに
――影響されず、動じず、ただ自分であること 古の名僧はこう言った。「竹の影が階(きざはし)にさっと映って風に揺れても、階に積もる塵(ちり)は動かない。月の光が池の水を突き破るように映っても、水面には一筋の痕跡も残さない。」 また、ある儒者は...