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無になろうとするのではなく、今を淡々と片づけよ
多くの人が、「無念無想」の境地――何も思わず、何にもとらわれない心を目指して懸命に修行している。しかし、頭では「無になろう」と思えば思うほど、かえって念が生まれ、心が乱れてしまう。 けれど、もし過去のことを思い返して悩まず、また未来のことを... -
世間の風に動じず、静かにうなずく心でいる
人生をある程度経験して、世の中の甘さも辛さも味わい尽くせば、人の心がころころ変わろうとも、もはや気にもならなくなる。まるで、天気が晴れたり雨が降ったりするのと同じようなものだ。わざわざ目を開いて確かめるのも面倒なほど、どうでもよくなる。 ... -
欲も悩みも、地位の上下に関係なく人に付きまとう
節義に生きる烈士は、たとえ大国の王位を譲られても辞退する。一方で、欲深い者は、ほんの一文の金を得るためにも激しく争う。その人柄は天地の差ほど異なる。 しかし、「名誉を求めること」も「利益を求めること」も、本質的にはどちらも「欲」に縛られて... -
現象にとらわれず、超越の道を歩むには、修養あるのみ
「空(くう)」とは、何も存在しないことではない。目に見える現象に執着することは真実ではないが、かといって、現象そのものを否定してしまうこともまた、真実とは言えない。 では、このような問いを、もし釈尊に尋ねたら、何と答えるだろうか。釈尊はこ... -
最期に残るものを思えば、何が大切か見えてくる
樹木は枯れ果て、根だけが残ったときに初めて、それまで美しく咲いていた花や、青々と茂った枝葉が、いかにはかないものであったかがわかる。 人間もまた、いよいよ棺に納められる段になってようやく、生前あれほど大切にしていた子どもや財産、地位や名誉... -
力を蓄え、時を待つ者が、最後に高く飛ぶ
長く地上に伏して力を蓄えていた鳥は、いざ飛び立つと、他のどの鳥よりも高く舞い上がる。他の花より早く咲いた花は、美しく咲き誇る一方で、誰よりも早く散ってしまう。 このような自然の道理を理解していれば、人生の中で一時的に勢いを失い、足踏みして... -
詩心は、静けさと自然のなかに湧き上がる
詩を作ろうという心がふと湧き上がるとき――それは喧騒から離れた、鄙びた場所に身を置いたときである。たとえば灞陵橋(はりょうきょう)のような、物静かな田舎の橋の上で、かすかに詩を口ずさめば、林や山あいの風景が、まるで自分の心の中に広がってく... -
執着を捨て、一筋の光を頼りに歩む
もし心の中から、ほんの少しの物欲さえ消え去ったなら――それはまるで、雪が炉に触れた瞬間に溶け、氷が陽の光に当たって静かに消えていくように、すべての執着が自然と溶けてなくなっていく。 そして、目の前に一筋の清らかな光明が差し込めば、澄んだ夜空... -
欲望を離れ、本性に従えば人生は楽しくなる
物欲にとらわれて生きると、人はやがてその重さに苦しみ、人生が悲しく感じられるようになる。しかし、人間本来の清らかな本性に従って、自然に、素直に生きることができれば、人生は本来、とても楽しく、安らかなものとなる。 なぜ物欲に縛られた人生が悲... -
感情に巻き込まれず、冷静に見つめよ
権力者たちは、まるで龍が天に昇るように威勢を誇り、英雄たちは、虎が荒れ狂うように激しく争い合う。一見すると壮絶な「龍虎の戦い」のようにも見えるが、冷静な目で見れば、それはただ――蟻が生臭いものに群がり、蠅が血に群がっているのと何ら変わらな...