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人は長所をもって任じ、短所を知って備える
—短を責める前に、長を活かせ 貧窮の報告を受けて太宗は、「人材推薦が杜撰だ」と魏徴らを責めた。これに魏徴は明快に反論する。「我々は人物の長所と短所を明示して評価しています。凌敬は諫言に優れた才を持つが、贅沢を好むのは欠点。しかし、その短所... -
親王もまた一臣にすぎず、礼の外にあってはならない
—私情と礼法の混同は、政を乱す第一歩 越王李泰は太宗の寵愛を受けていた。ある者が「高官たちは越王を軽んじている」と讒言し、太宗は激怒し大臣たちを叱責した。だが、魏徴はそれに対して毅然と反論する。 「礼においては、親王であっても天子の臣下と同... -
臣の忠言を遮ること、君の恥なり
—統治に境界を設ければ、誤りも見逃される 尚書省の房玄齢と高士廉が宮城北門の工事について質問したところ、太宗は「南衙の政だけを管轄すればよい」と叱責した。しかし魏徴は、「それでは忠臣の職務を果たせない」と進言する。大臣とは、君主の手足・耳... -
身内を律せぬ者に、国を治める資格なし
—一時の情より、永続の制度を守れ 太宗は、皇族の義父・楊誉が下働きの婢をめぐって騒動を起こし、官吏の薛仁方が法に従って取り調べたことに腹を立て、薛を罰した。それに対して魏徴は、「身内を特別扱いすれば、国の統制は失われる」と直諫する。 「狐や... -
盛儀よりも、民の安寧を
—見せかけの栄光より、実のある政治を 突厥は平定され、瑞祥は現れ、五穀豊穣――誰もが皇帝の封禅を勧める中、魏徴はただ一人反対を貫いた。「功績はあっても、民はまだその恩に浴していない」「収穫は続いていても、倉は空である」「礼を尽くす余裕は、ま... -
忠よりも良を、滅びよりも繁栄を
—真に国を救うのは、理にかなう「良臣」 魏徴が讒言されたとき、太宗は「嫌疑を受けないよう形に注意せよ」と諭した。これに対して魏徴は、「形(見た目)ではなく、義(正義)に基づくことこそが政治の道」と反論する。そして、「私を忠臣にしないでくだ... -
忠義の仮面をかぶった讒言は、国を腐らせる
—正しさを装う者にこそ、真の害あり 人を誣告し、謗(そし)っては正義を語る者がいた。太宗の御前に何度も召される御史、権万紀と李仁発。彼らは忠誠の名のもとに、根拠なき糾弾を繰り返し、太宗の怒りを煽り、多くの有能な官僚がその冤罪に怯えた。 魏徴... -
信なくば、国は立たず
—恩恵は、確かな約束と一貫した政策の上に 太宗は即位直後に、関中で2年、その他の地で1年の租税免除を発する。しかしその後、実施の時期を改める詔勅が続いたことで、民衆は混乱し、期待が裏切られる結果となった。魏徴はこれを厳しく諫め、「徳を積むな... -
権力は民の幸せを思ってこそ徳となる
—たとえ一人の娘の縁談であっても 皇帝であっても、民の幸福を顧みずに自らの欲を優先すれば、たちまち徳は損なわれる。太宗が美しい娘を後宮に召そうとしたとき、魏徴はその娘がすでに婚約していると聞き、ためらうことなく進言した。「人民の喜びを奪う... -
諫めの心は、日々の姿勢から育つ
幼いころから正しき姿を見て育った者は、やがて自然にその徳を身につける。太宗の皇太子(のちの高宗)は、ある日、父帝が激怒して部下を処刑しようとした場に居合わせ、命がけでこれを諫めた。周囲の者は「皇太子が帝の機嫌を気にせず諫言するなど前代未...