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名ばかりの称号にとどまらず、制度の本質を問い直せ
— 封建制の名残が残る時代に、中央集権の意義を改めて問う 背景と主旨 第八章では、唐代における「封建制(ふうけんせい)」の名目的存在と、それに付随する制度的・歴史的議論が取り上げられている。太宗の時代、実際には中央集権的な「州県制」が基本で... -
本質を見抜く者は、沈黙の中に真意を聞き取る
— 褒める言葉の軽さが、人となりを物語ることもある 貞観二十一年、太宗が翠微宮に滞在していた時のこと。彼は、穀物を司る司農卿の李緯を、新たに尚書省の戸部尚書(財政担当の長官)に任命した。その頃、宰相・房玄齢は長安に留まり、政務を預かっていた... -
正と邪を見極める力が、政治の根を支える
— 君主の公平さこそが、忠臣を呼び寄せる 貞観十四年、特進の魏徴は、君主による人材見極めの重要性と、公正な褒賞・処罰がもたらす国家の秩序について、詳細な上奏を行った。 彼は冒頭で「臣下を知るのは君主に勝る者はなく、子を知るのは父に勝る者はな... -
「自分はできる」は、たいてい過信である
— 自薦が競争と驕りを招くなら、慎むべきである 貞観十三年、太宗は側近たちに、こう問いかけた。「太平の後には乱が起こり、乱の後には太平が来ると聞く。今は隋末の大乱を経た後で、ちょうど太平の時代にある。このような時に天下の安寧を保つには、ただ... -
名ばかりの高官が組織を腐らせる
— 能力ではなく縁故や功績で選ばれた者が秩序を乱す 貞観十一年、御史台の治書侍御史であった劉洎(りゅうき)は、尚書省の副官(左右丞)任命の在り方について、厳しく上奏した。尚書省は国家の政務を司る中枢であり、その職務を担う者が無能であれば、組... -
地方を軽んじる政治は、民を苦しめる
— 現場を支える人材こそ、国家安泰の鍵を握る 貞観十一年、御史台の馬周が上奏文を奉り、太宗にこう進言した。「天下の安寧は、人材にかかっており、その中心となるのは、州刺史や県令といった地方長官です。県令は人数が多く、そのすべてに賢者をあてがう... -
誤って悪人を登用すれば、天下の害となる
— 才能よりもまず、人柄を見極めよ 太宗は、魏徴にこう語った。王者は、官職にふさわしい人材を選び、軽々しく登用してはならない。なぜなら、自らの行動や言葉はすべて天下の手本となり、善人を用いれば善人が集まり、悪人を用いれば悪人が群がってしまう... -
人を見る目がなければ、制度は機能しない
— 才ある者を選ぶ難しさと、うわべに惑わされぬ眼力 太宗は吏部尚書の杜如晦に、人材採用のあり方について疑問を呈した。表面的な話しぶりや文章力ばかりが重視されており、その人物の本質、つまり人格や行動規範が見られていない――そのような者が数年後に... -
才能はいつの時代にも存在する
— 探す目がなければ、逸材は埋もれたままになる 太宗は、右僕射の封徳彝に対して、国を治める根本は「人材を得ること」に尽きると語った。人材を推挙するように命じたにもかかわらず、誰の名前も上がってこないことに不満を示し、「重責をともに担ってくれ... -
地方を任せる人こそ、国を支える柱である
— 責任を担う者の選び方が、治世と乱世を分ける 太宗は、民を思い、毎晩眠れぬほど地方統治に心を砕いていた。中央の目が届かない地方においては、都督や刺史といった地方長官の善政こそが、民の暮らしを支え、国家の安定を保つ鍵になるからである。 彼は...