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小さな国でも秩序は守られる――伯の国における格差と保障の調和
孟子が語る「伯の国(大国に次ぐ国)」の俸禄制度は、規模が縮小しても原理は変わらない封建的秩序の維持構造である。伯の国では領土が「方七十里」とやや狭まり、中枢である卿の報酬倍率が「3倍」に下がるが、依然として「君:卿=10倍」の構造は維持され... -
序列と職責に応じた報酬――周制に見る“正当な格差”の設計
孟子が語る周制の俸禄体系は、土地の広さと役職の位階に応じた合理的な報酬制度を特徴とする。大国(=公・侯の国)では、上に立つ者ほど重い責任を担うゆえに報酬も大きく、下に属する者も生活保障がなされていた。最下層の下士であっても、自分が田を耕... -
土地が示す政治秩序――徳と位に応じた領土制度
孟子は、周の封建制度における「領土=俸禄の実体」として、爵位ごとの土地規模の違いを解説している。これは単なる領地ではなく、地位と職責に基づいて与えられる政治的な範囲を意味する。そして、規定より小さな国は天子に直接会う資格を持たず、諸侯の... -
権威と秩序を生む階層制――周の爵位制度の合理性
孟子が伝える「周の爵位制度」は、天下の統治と封建秩序の枠組みを支える階層構造を示している。大きく分けて二種類の「位(くらい)」がある: 天下レベルの五等爵(天子〜諸侯) 国内レベルの六等官(君〜士) これにより、外的な封建秩序(天子と諸侯)... -
歴史の破棄は制度の崩壊につながる――孟子の嘆き
孟子は、衛の北宮錡(ほっきゅうき)から周王朝における爵位や俸禄の制度について問われた際、「詳しくはもう聞くことができない」と嘆いた。その理由は、諸侯たちが周の制度を嫌い、制度を記した書物(典籍)を自ら破棄してしまったからである。孟子は「... -
技と徳、始まりと終わり――孔子は集大成のリーダー
孟子は、孔子を「集大成の聖人」とした上で、その意味を音楽と弓術の比喩を通じて説明する。始まりを正しく導くには智(ち)=技巧が必要であり、終わりを美しくまとめるには聖(せい)=力=人格の力が求められる。孔子はその智と聖、技巧と力、調和の発... -
清廉・責任・調和――すべてを調和した聖人、孔子こそ「集大成」
孟子は、伯夷(はくい)・伊尹(いいん)・柳下恵(りゅうかけい)という三人の聖人をそれぞれの美徳の代表として位置づけ、それらをすべて兼ね備えた人物こそが孔子であると語る。孔子は、時に応じて進退・交際・仕官の是非を判断し、一つの徳に偏らず、... -
その時その場にふさわしく――孔子の柔らかな進退の道
孟子は、孔子の進退を例に、「状況に応じて自然にふるまうことこそ、聖人のあり方である」と語る。斉(せい)の国では、炊飯中の米を手でかき出してまですぐに立ち去った。一方、生まれ育った魯(ろ)の国を離れる際には、「遅遅として吾行く」と、ゆるや... -
他人がどうであれ、自分の道を正しく歩む――柳下恵の潔い生き方
孟子は、柳下恵(りゅうかけい)の生き方を通じて「自分の信念を曲げずに世俗と向き合う態度」の典型を示す。たとえ君主が不正であろうと、それを恥とせず、官が低かろうと受け入れる。自らの才徳は隠さず尽くしながらも、志を曲げることなく、人に捨てら... -
先覚者として生まれた使命を果たす――伊尹の自覚と責任
孟子は、伊尹(いいん)の言葉を通じて「先覚者とは何か」を力強く描く。伊尹は、天下が治まっていても乱れていても、堯舜(ぎょうしゅん)の道を広め、民を導くために自ら進んで仕えた。彼は「私は天が民のために遣わした先覚者である」と自任し、一人で...