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覚悟を決めれば、道は開ける
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文(抄) ある山中を座頭ども十人ばかり連れ立ち通り候が、崖の上を通り候時、皆々足ふるひ、大事にかけ、胆を冷やし参り候処、真先の座頭踏みはづし、崖に落ち申し候。残りの座頭ども声を揚げ、「やれやれかはいなる... -
孔子もまた「狂」を尊んだ――調和より気概を
一、常識人が「狂」に憧れる理由 編者自身が「円満」「妥協型」であると自己開示するくだりは、自身の生き方が『葉隠』的な“狂”とは真逆にあると認めつつも、だからこそその精神に深く心を動かされるという逆説を明らかにしています。 これは単なるエッセ... -
筆に狂気を込めよ ― 武士の一字は破紙の覚悟で
一、章句の内容と背景 この章では、文字を書く行為そのものが武士の気構えを表現する場面として描かれています。 常朝はこう語ります: 「色紙に一字を書くときは、紙いっぱいに書こうと思い、紙を破るつもりで書け。上手下手は専門家の領分。武士には“あ... -
命を懸けて七度言え ― 諫言に「道理」より「誠」の貫通力を
一、章句の要約 この章句には、主君への諫言の極意が二つの逸話を通して語られます。 ●逸話1:相良求馬(さがら ぐま) 殿(鍋島光茂)に強く諫言して怒りを買い、切腹を命じられる。使者に対し「申し残したことがある」と伝え、切腹前に再び強い諫言を主... -
首が落ちても誠を失うな ― 心が生きているかぎり、戦は終わらぬ
一、章句の要約と現代語訳(逐語) あらすじ 鍋島家の道白の息子・五郎兵衛が、遺恨のある浪人・岩村久内を道で見かけ、稲をぶつけて口論、堀に突き落として帰宅。 久内は兄・源右衛門を連れ、仕返しに五郎兵衛の家へ。 五郎兵衛は刀を構えて待ち伏せし、... -
死を選ぶ美談より、即断の誠こそが武士道
一、山本常朝の赤穂義士批判の要点 批判点内容❶ 仇討ちの遅延浅野内匠頭切腹から吉良上野介討伐まで1年9ヶ月もかかった。➡「もしその間に吉良が病死していたらどうするつもりだったのか」❷ 討ち果たしても即座に切腹しなかった泉岳寺で潔... -
死を忘れずに生きる者は、恥を知らぬ
一、物語の要約:死を問う女房、覚悟を促す 背景 高木某、近所の百姓三人との口論に敗れ、田の中で打ちひしがれ帰宅。 女房が静かに問う:「死ぬことをお忘れですか?」 高木は「忘れたことなどない」と答える。 女房はなお言う:「いずれ人は一度は死ぬも... -
命を燃やして誠を示す ― 仇討ち女房の魂
一、物語の要約:喧嘩と執念の果てに 背景 黒川小右衛門は扶持三石、慎ましく芦原に暮らしていた。 隣人の徳永三左衛門は有徳の者で、かつ借金の担保として蚊帳を預かっていた。 祭礼のため蚊帳を借りようとしたが、三左衛門に拒絶され、罵倒まで受ける。 ... -
絶体絶命からが真の勝負 ― 手を切られたら口でかみつけ
一、章句の原文と逐語訳 原文(聞書第七より) 大木前兵部勇気勧めの事丘ハ部組中参会の時、諸用済みてよりの話に、「若き衆は随分心掛け、勇気お嗜み候へ。勇気は心さへ付くれば成る事にて候。刀を打折れば手にて仕合ひ、手を切落さるれば肩節にて、ほぐ... -
死して悪鬼たらん ― 一念が命を超えるとき
一、章句の原文と現代語訳(逐語) 原文(聞書第二より) 出し抜きに首打落されても、一働きはしかと成るはずに候。義貞の最期証拠なり。心かひなく候て、そのまま打倒ると相見へ候。大野道賢が働きなどは近き事なり。これは何かする事と思ふぞ唯一念なる...