-
即答力は信頼の証 ― 段取り上手は出世の才
一、原文(抄出) 一とせ綱茂公九郎右衛門を召出され、「妹ども川上遊山に参り候に付て、其方供致す由。女中大勢の事に候へば、乱に之れ無き仕組仕るべき事、何と仕組み候や」とお尋ね成され候。九郎右衛門即座にて、右の仕組一々少しも滞無く委細申上げ候... -
光る道具より、光らぬ覚悟 ― 外聞を捨てて、実を取れ
一、原文(抄出) 原の城にて外記事、光り渡り候物具を着致し候に付、勝茂公お気に入らず、その後、日に立ち候物を御覧候ては、「外記が具足の様な」と御意毎度の由。右の話に付、武具・衣装等目に立ち候様に仕るは手薄く見え強みなく、人の見すかし申すも... -
治むるは任せるにあり ― 寛と簡にして、しかも統ぶ
一、原文(抄出) 「話にかからぬ病身にて、大寺を預りよく勤むべしと思ひたらば、仕損じこれあるべく候。成る分と存じ候ゆゑ、気色勝れざる時は、名代にして諸事済し、なにとぞ大はずれの無き様にと心掛くるばかりなり」 「粗に入り細に入り、よく事々を... -
事務に埋もれるな、政を語れ ― 戦略なき組織は沈む
一、原文(抄出) 寄合日の書付を御覧なされ候て、仰出され候は、「詮議の書付、雑務方計りにて候。国家の事一事も相見えず。沙汰の限り不届千万」と殊の外のお叱り、遊出を以て仰出され候由。 二、書き下し文(要所) 勝茂公が定例会議の議題をご覧になっ... -
恐れられてこそ、信は宿る ― 真の奉公は迎合を超えて
一、原文(抄出) 主にも、家老。年寄にも、ちと隔心に思はれねば大業はならず。何事もなく腰に付けられては働かれぬものなり。この心持これある事の由。 二、書き下し文 主君にも、家老や年寄といった重臣たちにも、多少は疎まれたり、距離を置かれたりす... -
才は自ずと現れ、志は必ず引き上げられる
一、原文(抄出) 御用に立ちたしと思ふ奉公人は、そのまま引上げ召使はるる儀疑ひもなき事なり。上よりは御用に立つ者がなと、かねがね御探促なさるる事に候。能役者よりは、御国家の御用に立つ奉公に心掛け候ものは、何時の御時代にも御探促の事に候。御... -
忠義は、誇るものにあらず ― 忠節に名乗り出るなかれ
一、原文(抄出) 拙者は常々は何の御用にも立ち申さず候へども、一命を捨て候節は拙者一人にて候。盛徳院殿もつての外立腹、「家中の者一人も命を惜しむ者あるべきや、高慢の儀を申す」と候て、手打あるべき様子に候故… 二、書き下し文(要所) 盛徳院殿... -
任務を受ける心にこそ、その人の器が映る
一、原文(抄出) 吉凶に付、仰渡しなどの時、無言にて引取りたるも、当惑の体に見ゆるなり。能きほどのお請あるべき事なり。前方の覚悟が肝要なり。役など仰付けられ候節、内心に嬉しく思ひ、自慢の心などあれば、そのまま面に顕はるるものなり。数人見及... -
生きながら鬼神となれ ― 忠義を貫く者の覚悟
一、原文(抄出) 今時の奉公人を見るに、いかう低い眼の着け所なり。スリの目遣ひの様なり。大方、身のための欲得か、利発だてか、または少し魂の落着きたる様なれば、身構へをするばかりなり。我が身を主君に奉り、すみやかに死に切つて幽霊になりて、二... -
備えは日常の中にあり ― 治にいて乱を忘れず
一、原文(抄出) 「草軽作り候や。この細工成らざる者は足もたずなり」「一人一升づつの兵糧を袋に入れ、付けさせ候。向より直ちに出陣の仕組なり」「草軽はすべり候。足半よく候となり」「かねて心にかけ用意あるべき事なり。もつとも作り習ひ候はで叶は...