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時代を嘆かず、時代に添え
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第二より) 今時の衆、「陣立てなどこれなく候て仕合せ」と申され候。無嗜みの申分にて候。わづかの一生の内、その手に会ひたき事に候。寝産の上にて息を引切り候は、まづ苦痛堪へがたく、武士の本意にあら... -
時代に殉ぜず、時代に応ずる
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第二より) 時代の風と云ふものは、かへられぬ事なり。段々と落ちさがり候は、世の末になりたる所なり。一年の内、春計りにても夏計りにても同様にはなし。一日も同然なり。されば今の世を、百年も以前の良... -
役立つ者は静かに染み込む、目立つ者は結果で示す
一、原文 お側の奉公は、成るべく差出でざる様に、ぶらぶらとして年を重ね、自然と御用に立つ様になければ物に成らざるなり。 一家の内の様なればなり。外様の奉公は、それにては追付かず、随分はづれなく心掛け、上たる人の目にも付く心持あるなり。(聞... -
混乱の時こそ“守るべき核心”から離れるな
一、原文 大石小助内頭人の時分、夜中に御内女中部屋の辺に紛れ者忍び入り候に付き、捕ヘ申すとて、上を下にかへし、男女上下走り廻り候に、小助相見えず候故、老女など方々尋ね候へば、御打物の鞘をはづし、お次の間にすわり、黙り候て居り申し候。御身辺... -
真の忠義は“静かなる一点”に現れる ― 混乱時にこそ軸を失うな
一、原文(抄出) 石隈子五郎左衛門の事。申の年江戸大火事、光茂公・綱茂公麻布お屋敷に御座なされ候処、お屋敷に火懸り、急に焼け塞がり、お出でなさるる道これなく、お馬に召し御座なされ候を、お側・外様の者大力量を出し、塀を切崩し、そこよりお出で... -
細部にこそ忠誠が宿る ―“気づき”の力が信頼を築く
一、原文(抄出) 志波喜左衛門御小姓役の時の事。勝茂公御代には、御家中の者、大身小身によらず、幼少の自分よりお側に召使はれ候。喜左衛門相勤め候時分、ある時お爪をお切りなされ、「これを捨てよ」と仰せられ候へば、手に載せ候て、立ち申さず候に付... -
備えは美意識に宿る ― 清潔感こそ信頼の入口
一、原文(抄出) 写し紅粉を懐中したるがよし。自然の時に、酔覚か寝起などは顔の色悪しき事あり。斯様の時、紅粉を引きたるがよきなりと。 二、書き下し文(現代仮名) 写し紅粉(うつしべに・おしろい)を懐中しておくのがよい。不意のときに、たとえば... -
日常の人こそ、非常の人 ― 平生がすべてを決める
一、原文(抄出) 公界と寝間の内、虎日前と畳の上、二つになり、俄に作り立つる故、間に合はぬなり。ただ常々にある事なり。畳の上にて武勇の現るる者ならでは、虎口へも選び出されず。 二、書き下し文(現代仮名) 公的な場と私生活、虎(危機)の前と日... -
根回しは誠意の第一歩 ― 事を成すには、先に人心を得よ
一、原文(抄出) 談合事などはまづ一人と示し合ひ、その後聞くべき人々を集め一決すべし。さなければ恨み出来るなり。また大事の相談は、かもはぬ人、世外の人などにひそかに批判させたるがよし。贔贋なき故よく理が見ゆるなり。一くるわの人は談合候へば... -
一日一生 ― 今日一日を完全燃焼せよ
一、原文(抄出) 生野織部申され候は、「奉公は今日一日するとさへ思へば、如何様なる事もさるるなり、一日の仕事ならば、どうもこらへらるべし。翌日もまた一日なり」と申され候由。 二、書き下し文(要約) 生野織部はこう語った。「奉公というものは、...