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人は欺かれて死すより、知らされて生きるを選ぶ
一、原文の引用(抄) 友田正左衛門は、小姓として光茂公に仕えていた。芝居役者・多門正左衛門に入れ込み、名前や家紋まで真似、生活費が尽きたあげく、同僚の刀を盗み質入れ。槍持ちの告発により発覚し、両名とも死罪に。処刑場では、介錯人が誰であるか... -
裁きの刃は、己の心をも斬る
一、原文の引用(抄) 北島作兵衛は、光茂公の近侍として仕えていた。あるとき召されて出仕した際、緋縮緬の下着を着ていた。調査の結果、神代弁之助殿と男色関係にあり、前夜一宿し、その下着を着たまま出仕したことが露見。切腹を命じられ、大石小助に対... -
法に落ちず、理に落ちず、人に落ちるなかれ
一、原文の引用(抄) 鍋島次郎右衛門は、光茂公の高伝寺参詣にお供したとき、主君の眼前で小便をしたかどで切腹を仰せつけられた。 常朝は進言した:「その処断、四段の措置をもって臨むべし」 世の悪評を招くので、取り上げてはならぬ。 本人に言い訳を... -
一門の誇りに生き、死して責を果たす
一、原文の引用(抄) 「承知いたしました。まず、碁をご覧ください」―― 切腹命令を受けながらも、静かに碁を打ち終えて応じた助右衛門。 十八人の家臣が「お供仕る」と申し出ると、息子織部が言った。「いさぎよいことだ。私が介錯してやろう」…かくして... -
才気は徳に従わねば、命をも焼き尽くす
一、原文の引用(抄) 「わしが完全に腹を切りおわり、首を討てといったときに初めて介錯するのだぞ。声をかけないうちに切ってみろ。七代あとの子孫まで崇り殺してやる」…「いやいや、まだすまぬ」期 腰ぬけといふた伯父めくそくらへ 死んだる跡で思ひ... -
人生は夢の間 ― 好きを極めて生きよ
一、原文の引用 人間一生は、誠に編(あや)しき事なり。好いた事をして暮すべきなり。夢の間の世の中に、好かぬ事ばかりして、苦を見て暮すは愚かなることなり。この事は、わろく聞いては害になる事ゆゑ、若き衆などにつひに語らぬ奥の手なり。我は寝る事... -
成長は“今の場所”を出る勇気から始まる
一、原文の引用 人のたけは、九分十分と申し候へども、何段ほどこれあるものに候や、無量のものなり。これまでと思ひ一つ所に滞り自慢などする事、なかなか卑き位なり。歌に、いづくにも心とまらば住みかへよ ながらへば又もとの古里かくの如くに、また住... -
教えは、伝わらぬことを覚悟して伝えるべし
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第六) 相良市右衛門書置の奥書に、「右の通り申置き候ても、子々孫々に至り、相守り申すまじくと存じ候。その謂はれは、我等五歳の時より酒を好み、大酒仕り候に付、たびたび意見に会ひ申し候へども、終に... -
動いていても、心が眠れば人形同然
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第二より) 道すがら、何とよくからくつた人形ではなきや。糸を付けてもなきに、歩いたり、飛んだり、はねたり、物まで言ふは上手の細工なり。来年の盆には客にぞなるべき。さても、あだな世界かな、忘れて... -
死を見つめて、生を仕舞え
一、原文の引用と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第二より) 貴となく賤となく、老となく少となく、悟りても死に、迷ひても死に、さても死ぬ事かな。我人、死ぬと云ふ事知らぬではなし。ここに奥の手あり。死ぬと知つては居るが、皆人死に果ててから、我は...