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忠は先駆けて命を賭す
一、原文引用(抄) 勝茂公御病気差重られ候時分、光茂公へ志波喜左衛門申上げ候は、「私儀はかねて御供のお約束申上げ候。御本復不定にお見え遊ばされ候間、御命代りにお先に腹を仕り、自然御本復の儀も御座あるべく候やと存じ奉り候。いづれ御供仕る儀に... -
一つの枕に死すという約束
一、原文引用(抄) 安芸殿死去の時、組家中十八人、内組衆二人追腹仕り候に付て、御家老衆より、殿様を差置き、寄親の供仕る事然るべからざるの由、しきりに差留められ候。組中の者申し候は、「先年人院一戦の時、主水殿組の内選び取りと候に付て、我々を... -
召されただけで、すでに命を捧ぐ
一、原文引用(抄) 肥前様追腹。林形左衛門は肥前様(忠直)ご存命のうち、お側に適任者がいないとのことで御所望があり、江戸屋敷に罷り登る支度をしていた。 その最中に、御死去の報が届いた。一日も仕えることはなかったが、数百人の家中からとくに望... -
忠義は、生死を超えて誓うもの
一、原文引用(抄) 勝茂公が江戸で逝去されたとの報せが届いた。軽輩の大島外記は、畑で作業中に妻からその知らせを受けた。 「行水を沸かせ、帷子を出せ。わしは追腹を切るぞ」 家人たちは、身分不相応だと止めるが、外記はこう語る: 「かつて西日での... -
斬る覚悟と、斬られる覚悟は紙一重に在り
一、原文引用(抄) 相浦源左衛門の組の者が不届きの罪により放討を命じられた。ところが家老は、その放討命令書を当の本人に持たせて、源左衛門のもとへ届けさせた。 源左衛門は書面を開いてこう告げる:「その方を討てと命ぜられている。東の土手で、運... -
任務を果たし、誇りを遺す。志は血を越える
一、原文引用(抄) 縫殿助組内の石井与左衛門に奸謀ありとのことで、組頭・石井縫殿助が「放討」(討手による処刑)を命じられた。密かに家来1名(伊東彦右衛門)を連れて本人宅へ向かい、夜討ちを決行。火鉢を倒して暗闇になり、家来が誤って縫殿助の腰... -
潔さの奥にある、親の極意
一、原文の引用(抄) 森門兵衛の嫡子が喧嘩で手負いとなって帰ってきた。門兵衛が「相手をどうしたか」と問うと、「切り伏せました」と答えた。「止めはさしたか」と問えば、「いかにも」と答える。 そこで門兵衛は言った:「よくやった。であれば、思い... -
命の一刀に添えるは、心のひと言」
一、原文の引用(抄) 槙口与兵衛は、一生のあいだに数人の介錯を務めた。あるとき、金原某の切腹に立ち会った。金原は腹に刀を突き刺したが、引き回すことができず、もがいていた。与兵衛はすぐさま近寄り、「エイッ」と掛け声を発しながら大地を踏みしめ... -
命を断つは技にあらず、誠の極みなり
一、原文の引用(抄) ある者が切腹した際、介錯人が首を打ち落としたが、皮が少し残って首がたれた。検使が「皮が残ったな」と言うと、介錯人は憤慨し、首をつかんで切り離し、高々と掲げて叫んだ。「ご覧なされましたか」その場の空気は一気に冷え込み、... -
責の重さに折れるとき、心を折らぬ支えを持て
一、原文の引用(抄) 倉町勘左衛門は、江戸から佐賀への急使を命じられ、道中で定期船に乗り遅れ、熱田で発狂し、切腹をはかった。尾州の役人に止められて正気に戻ったものの、「尾州家に迷惑をかけた」ことを理由に切腹を命じられた。 また、村上源左衛...