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省みる者こそ、日々を深める
一、章句(原文) 若き時分、残念記と名づけて、その日その日の誤を書付けて見たるに、二十、三十なき日はなし。果てもなく候故止めたり。今にも一日の事を寝てから案じて見れば、云ひそこなひ、仕そこなひのなき日はなし。さても成らぬものなり。利発任せ... -
誉れは覚悟に宿る、若き日の一太刀
一、章句(原文) 沢辺平左衛門を介錯いたし候時分、中野数馬江戸より褒美状遣はし、「一門の外聞を取り候」と、事々しき書面にて候。介錯の分にて、斯様に申越され候事余りなる事と、その時分は存じ候へども、その後よくよく案じ候へば、老功の仕事と存じ... -
志をもって、天下に恥じぬ者たれ
一、章句(原文) 一鼎に逢ふて、「お家などの崩るると云ふ事は末代までこれなく候。仔細は、生々世々、御家中に生れ出で、お家は我一人して抱留め申す」と申し候へば、「大胆なる事を申す」と笑ひ申され候。二十四五の時の事なり。卓本和尚に一鼎申され候... -
鍛練は日常にあり、志は習慣から生まれる
一、章句(原文) 前神右衛門申付けにて、幼稚の時分、市風に吹かせ、人馴れ申すためとて、唐人町出橋に、節々遣はし候由。五歳より各々様方へ名代に出し申し候。七歳より、がんぢうのためとて、武者草軽をふませ、先祖の寺参り仕らせ候由。(聞書第二) ... -
志は乳とともに育てよ
一、章句(原文) 山本前神右衛門は、一門の子供、当歳子にても耳に口を寄せ、「大曲者になりて殿の御用に立ち候へ」と申し候。「未だ聞分けぬ時より、耳に吹込みたるがよし」と申され候由。(聞書第六) 二、現代語訳(逐語) 私の父・山本神右衛門は、一... -
忠誠とは、命を捨てることにあらず、理に従う勇気なり
一、原文抄出 盛徳院殿死去の時、追腹人光茂公差留められ候。御使、彼の屋敷に参り申渡し候へども、とかくお請申上ぐる者これなく候。その中に石丸采女(後名清左衛門)末座より申し候は、「若輩者の推参に候へども、御意の趣ごもつともに存じ奉り候。私儀... -
忠義は命にあらず、志にて尽くすべし
一、原文抄出 七月七日 盛徳院殿死去、追腹の者差留められ候以来、御法度に仰付られ候。その後紀州光貞卿御感心、御家中追腹法度成され候。寛文三年癸卯五月二十日公儀御法度に成り候なり。『鍋島光茂年譜』寛文元年(一六六一)項記載 二、書き下し文(... -
別れに言葉は要らず、忠は行動で示す
一、原文(抄) 御薬役来女相勤め、御臨終の時お薬道具打砕き、御印役喜左衛門光茂公御前にて御印を打割り申し候。両人にてお行水相仕舞ひお棺に入れ奉り、差俯向き泣入り罷在り候。ふと起上り、「殿は一人お越なされ候に、一刻も追付き申すべし」と…「さ... -
義の契りは、命をもって守る
一、原文引用(抄) 中野杢之助(年寄役)去年御参観の御道中にて、ある者説言致し、首尾悪しく、お目通リヘ召出されず候。御機嫌御勝れなされざるに付て、鍋島来女申上げ候は、「自然御本復遊ばされざる節は、杢之助・志波喜左衛門・某三人はお供仕るはず... -
忠誠は、怒りにまさるかを問え
一、原文引用(抄) 横尾内蔵之丞無双の槍突にて、直茂公、別けてお懇に召使はれ候。月堂様へお話にも、「内蔵之丞が若盛りにて、虎日前の槍を其方などに見せたき事なり。誠に見物事にてありし」と御褒美遊ばさるる程の者なり。内蔵之丞もお懇かたじけなく...