企業が成長を目指して拡大を進めることは必要不可欠ですが、その一方で、計画性を欠いた過剰な拡張は経営の破綻を招くリスクを孕んでいます。
その典型例が、サンウエーブの倒産です。同社は住宅公団の指定を受けたステンレス製シンク(流し台)で売上を急拡大させましたが、資金運用の基本を軽視し、無計画な設備投資に走ったことが致命的な失敗となりました。
サンウエーブは、土地の取得、新工場の建設、機械の購入といった設備投資を急速に進め、増産を続けました。
しかし、この急激な拡大は金融機関からの融資だけでは賄いきれず、ついには長期資金の裏付けを持たないまま設備投資を続けるという、極めて危うい資金繰りに依存する形となりました。
このような行動は、結果として経営を破綻へと導く大きな要因となったのです。
長期資金不足が招いた危機
長期借入金には返済期間が5年や10年といった余裕があり、一定の返済が進めば新たな借入れを行う余地が生まれるため、設備投資に適した資金源といえます。
しかし、長期資金の裏付けがない場合、設備投資に伴う支払いは短期的な手形に頼らざるを得なくなります。このような資金調達の綱渡り状態が、さらなるリスクを引き寄せました。
短期手形は、返済期限が通常2~3年に設定されるため、長期的な投資には適しません。その結果、手形の決済が固定資金余裕を赤字に追い込み、運転資金に深刻な負担をもたらしました。
また、売上の急増に伴い運転資金の需要も急激に増加したため、資金繰りが完全に追いつかず、最終的に資金ショートを引き起こしました。
経営者の資金運用理解の重要性
当時の社長である柴崎勝男氏が、資金運用の基本を十分に理解していれば、このような無謀な拡張は避けられたかもしれません。資金管理の失敗が企業全体に与える深刻な影響を、この事例は如実に示しています。
固定資金運用の基本原則
固定資金を安定的に運用するためには、以下の2点を確実に押さえることが重要です。
必要な固定資金余裕を資金運用計画の段階で確保すること
事業の拡大に伴う資金需要を正確に見積もり、必要な資金を事前に準備することが欠かせません。
経常利益目標の未達に備えたクッションを設けること
万が一の収益減少に対応できる余裕資金を確保することで、資金繰りの安定性を高めることができます。
これらの原則を徹底することが、資金管理の安定化を図り、持続的な経営を実現するための基盤となります。
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