目次
📜 引用原文(『ダンマパダ』第54偈)
それ故に心をまもり、正しい思いに安住し、正しい見解にもとづいて、
事物の生起と消滅とを知ったならば、
修行僧はものうさと睡眠に打ち克って、一切の悪いところ(=地獄など)を捨てるであろう。
🪶 逐語訳(意訳)
- だからこそ、自らの心をよく見張り、
- 正しい想念(正思惟)に落ち着き、
- 真理にかなった見解(正見)に立脚して、
- すべての現象が「起こり・消える」ことを深く理解すれば、
- 修行者(比丘)は怠惰と眠気に打ち勝ち、
- 地獄など悪い生存の境地を離れ去ることができる。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
心をまもる(cittaṃ rakkheyya) | 思いや感情を自覚的に観察し、放逸しないこと。 |
正しい思い(sammā saṅkappa) | 八正道の一要素。悪意・害意・欲望に染まらぬ意志。 |
正しい見解(sammā diṭṭhi) | 因果・無常・縁起など、仏教の真理に則ったものの見方。 |
生起と消滅(uppāda-vaya) | すべてのものは生まれては消える「無常」の原理。 |
ものうさと睡眠(thīna-middha) | 精進や瞑想を妨げる精神的怠惰と肉体的眠気。五蓋の一部。 |
一切の悪いところ(duggati) | 地獄、畜生、餓鬼などの悪趣。輪廻の苦しみの世界。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
だからこそ、心をよく見張り、正しい意志と見解を保つべきである。
物事は生まれては消えるという真理を見抜いたならば、修行者は怠惰や眠気に克ち、
悪しき境遇(苦しみの世界)から抜け出すことができる。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、意志・理解・内省を通して、「眠れる心」=怠惰と惰性の思考を打破せよと説いています。
それは精神修行者だけでなく、私たちの日常にも通じる姿勢です。
- 「すべては生まれては消える」――つまり、永遠に変わらぬものなどない。
- だからこそ、今この一瞬の意志と選択が、未来を形づくる。
**「見抜く眼」と「努力する意志」**が、人生の悪循環を断つ鍵なのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
意志と判断の質の向上 | 仕事においても、「物事の本質(生起と消滅)」を見抜く力が、決断の質を高める。 |
変化への対応力 | すべてが移ろう中で、「執着せず、次の一手に集中する」柔軟さが差を生む。 |
惰性の打破 | 気力が落ちたときこそ、「なぜそれをやるか」という根本目的(正思惟)を思い出すことが、再起の鍵となる。 |
悪循環からの脱却 | 同じミス・不調・行き詰まりを繰り返す人は、「怠り」と「誤った見解」に支配されていることが多い。それを打破するには「正見」と「継続的自省」が不可欠。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「心と見解を整えた者は、怠惰にも死神にも征服されない」
「変化を知ることは、変化に飲まれない智慧である」
この偈が伝えるのは、内面から立ち直る力です。
正見と正思惟、そして変化を見抜く智慧を持つ者は、怠け心を打ち破り、
どんな苦境からも抜け出す力を得るのです。
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