正しいことでも、伝え方と頻度を誤れば敬遠される
孔子の弟子・子游は、人との関わりにおいて「言いすぎることの害」を説いた。
上に仕える場合、たとえ意見が正しくても、あまりにしつこく口にすれば、かえって君主の機嫌を損ね、自らが辱めを受けることになる。
また、友人に対しても、繰り返し忠告ばかりしていると、次第に疎まれ、関係が冷えてしまう。
善意や正義感に基づいた言葉であっても、相手の心の準備や関係性を無視して押し付ければ逆効果になりかねない。
「伝える勇気」とともに「控える知恵」を持つ――それが人間関係の潤滑油となる礼の心である。
原文とふりがな付き引用
子游(しゆう)曰(いわ)く、君(きみ)に事(つか)えて数(しばしば)すれば、斯(すなわ)ち辱(はずかし)められ、
朋友(ほうゆう)に数すれば、斯ち疎(うと)んぜられる。
忠言も度を越せば、関係を遠ざける。
大切なのは、言葉の数ではなく、心の距離である。
注釈
- 子游(しゆう)…孔子の高弟の一人。冷静で理知的な発言が多く、対人関係のバランスに敏感な人物とされる。
- 君に事えて数すれば…君主や目上の人に何度も意見を述べすぎれば、かえって疎まれたり、恥をかくことがある。
- 朋友に数すれば…友人にも忠告を繰り返しすぎると、親しさを失ってしまう。
- 疎(うと)んぜられる…距離を置かれ、敬遠されるようになる。関係が冷めること。
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