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忠告も度を越せば、関係を損なう

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正しいことでも、伝え方と頻度を誤れば敬遠される

孔子の弟子・子游は、人との関わりにおいて「言いすぎることの害」を説いた。

上に仕える場合、たとえ意見が正しくても、あまりにしつこく口にすれば、かえって君主の機嫌を損ね、自らが辱めを受けることになる。

また、友人に対しても、繰り返し忠告ばかりしていると、次第に疎まれ、関係が冷えてしまう。
善意や正義感に基づいた言葉であっても、相手の心の準備や関係性を無視して押し付ければ逆効果になりかねない。

「伝える勇気」とともに「控える知恵」を持つ――それが人間関係の潤滑油となる礼の心である。

忠言も度を越せば、関係を遠ざける。

大切なのは、言葉の数ではなく、心の距離である。

原文

子游曰、事君數、斯辱矣。朋友數、斯疏矣。

書き下し文

子游(しゆう)曰(いわ)く、君に事(つか)えて数(しばしば)すれば、斯(すなわ)ち辱(はずかし)められ、
朋友(ほうゆう)に数すれば、斯ち疎(うと)んぜらる。

現代語訳(逐語・一文ずつ)

  • 「君に事えて数すれば、斯に辱められ」
     → 君主(上司)に仕えて、度々意見や進言をすると、かえって恥をかくことになる。
  • 「朋友に数すれば、斯に疎んぜられる」
     → 友人に対しても、何度も同じことを言えば、やがて疎まれてしまう。

用語解説

用語解説
子游(しゆう)孔子の高弟の一人。本名は言偃(げんえん)。
数(しばしば)繰り返し、何度も、しつこくという意味。
斯(すなわち)そこで、そのように、という順接の語。
辱められ(はずかしめられ)面目を失う、恥をかく、相手に嫌がられる。
疎んぜられる(うとんぜられる)距離を置かれる、嫌われる、関係が薄れる。

全体の現代語訳(まとめ)

子游はこう語った:

「主君に仕えるとき、何度も意見を述べすぎると、かえって恥をかくことになる。
同じように、友人に対しても、何度もあれこれ言うと、やがて疎まれてしまう」

解釈と現代的意義

この章句は、**「言葉には節度が必要であり、言い過ぎ・しつこさは逆効果になる」**という、
人間関係における極めて現実的なバランス感覚を語っています。

  • たとえ正しいことでも、“言いすぎ”は人の心を遠ざける
  • 忠言(まごころからの忠告)も、タイミングや頻度を誤ると信頼を損なう
  • 言うべきときに、的確に、最小限で伝えるのが君子の節度と配慮である。

ビジネスにおける解釈と適用

「進言・提案のしすぎは、逆効果になりうる」

  • 上司やクライアントに対して、繰り返し意見を述べすぎると、“うるさい”と思われてしまう
  • 重要な意見は、タイミング・表現・簡潔さを重視すべき。

「フィードバックも“しつこさ”は信頼を損なう」

  • 部下や同僚への助言も、繰り返しすぎれば“管理的”になり、関係が冷える
  • 適切な距離感と、相手が受け入れる準備があるかを見極める洞察が必要。

「聞かれたときに話す、のが最も効果的な助言」

  • 問われたときに話す方が、相手に届きやすく、尊重される印象も残せる
  • “言い足りないくらいがちょうど良い”という美徳は、今もなお有効。

まとめ

「言いすぎは遠ざける──節度ある助言が信頼を育てる」
〜“忠告は短く、信頼は深く”が人間関係の極意〜

この章句は、**「善意の言葉でさえ、過ぎれば害になる」**という、
人間関係における配慮と節度の重要性を教える言葉です。

現代でも、職場・家庭・友人関係において、
**「伝える力」以上に「控える力」=沈黙の美徳が信頼を築く鍵となります。

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