外注比率を高めることが、売上拡大と収益性向上にどのような影響を与えるのか。これを理解するためには「増分計算」を用いるのが最適です。以下では、K社のケースを例に、外注を活用した際の収益構造を具体的に試算し、外注化の効果を明らかにします。
試算条件:外注による10億円の売上増加
- 売上増加額
売上:10億円
外注品で全額を賄うケースを仮定。 - 付加価値率
外注比率が高い場合の一般的な付加価値率を15%と想定。
この結果、10億円の売上に対する増分付加価値は 1億5,000万円 となる。 - 増分費用の内訳
- 人件費
- セールスマン5名増:1,500万円
- 管理部門3名増:1,000万円
合計:2,500万円
- 経費
- 運賃と営業経費:売上の4.5%(慎重な見積もり) → 4,500万円
- 営業外費用:売上の2% → 2,000万円
- 総増分費用
2,500万円 + 4,500万円 + 2,000万円 = 9,000万円
- 増分経常利益
増分付加価値1億5,000万円 - 増分費用9,000万円 = 6,000万円
試算結果と考察
増分経常利益率
増分経常利益6,000万円 ÷ 売上10億円 = 6%
この数値は、目標としている5%を上回る成果であり、外注を活用することの収益性を強く裏付けています。
全体の経常利益率への影響
既存の経常利益率と増分経常利益率を統合した場合、全体の経常利益率は 5.4% に達します。これは、外注比率が高くても付加価値率の低下が全体の利益率を大きく損なわないことを示しています。
付加価値率の低下を補う構造
外注による付加価値率が低い(15%)場合でも、増分費用が非常に抑えられているため、最終的な経常利益率の上昇につながっています。この構造が、外注化の戦略的な利点を明確に表しています。
外注化の収益性を高める要因
固定費の抑制
外注を活用することで、設備投資や大規模な人員増強が不要になり、固定費の増加を防ぎます。これにより、損益分岐点の上昇を最小限に抑え、リスクを軽減します。
柔軟性の向上
外注を通じて、繁忙期や需要の急増に柔軟に対応できる体制を確保できます。このため、売損じを防ぎ、市場占有率の拡大にも寄与します。
増分費用の低さ
外注品の付加価値率が低くても、運賃や営業経費、営業外費用といった増分費用の割合が小さいため、収益性を確保できます。
結論:外注比率を高める戦略的意義
K社の試算結果は、外注を活用することで企業全体の収益性が向上する可能性を明確に示しています。以下のような利点が期待できます。
- 収益拡大:売上の増加に伴う利益率の改善が可能。
- リスク管理:固定費の抑制と損益分岐点の安定化による経営リスクの軽減。
- 市場占有率の向上:需要増に柔軟に対応することで、顧客満足度の向上とシェア拡大を実現。
一見すると外注比率の増加は付加価値率の低下を招くように見えますが、増分利益率や全体収益率を向上させる結果となり、企業成長に大きく寄与します。今後、各企業が外注比率の最適化を図り、自社の戦略に取り入れることが競争力の維持・向上につながると言えるでしょう。
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