企業の存続を担う最高責任者である社長は、常に存続を脅かすリスクを把握し、そのリスクを回避するための手段を講じる必要がある。
企業が直面する危険は非常に多岐にわたる。社長は、それらの危険が具体的にどのようなものであるかを把握し、どのようにチェックし、どのように対応すべきかを理解しておく必要がある。それは自社だけでなく、取引先に関しても同様であり、監視を怠ることは許されない。
一般的にはバランスシートや損益計算書の分析だけで済ませることが多いが、企業の危険度のチェックはそれほど単純ではない。それらの分析に留まらず、さらに深い視点からリスクを見極める必要がある。
そこで、本章では、バランスシートや損益計算書以外にチェックすべきリスクについて、主なポイントを挙げてみることとする。それらは以下の通りである。
- 市場占有率の状況
- 年間計画の達成度
- 季節的な変動の影響
- 市場のリスク分散がどの程度進んでいるか
- 内作と外作のバランス
- 資金の回転率
- 賃金率の適正性
これらが主なリスクチェックのポイントであり、それぞれについて詳細に考察する必要がある。
上記の分析は、「事業構造」をさまざまな視点から検討したものであることに気付くだろう。社長の最重要な役割は、まず自社の事業構造を安全で堅実なものに整えることだ。その上で、この基盤をもとに経営を展開していくことが求められる。
企業存続の安全を図るためには、社長が事業構造をさまざまな角度から分析し、リスクを軽減する対策を講じることが必要です。以下に、企業の安全性を確保するために注目すべき主なポイントについて説明します。
1. 占有率
市場における占有率は、企業の安定性と収益性を左右する重要な指標です。占有率が低下すると競争力が弱まり、売上や利益の減少につながります。定期的に占有率を確認し、市場における地位を守るための戦略を立てることが求められます。
2. 年計
年計(年間の売上推移)は、長期的な売上トレンドや成長性を見極めるのに役立ちます。単月や四半期ごとの変動に左右されず、年単位での売上傾向を把握し、安定的な収益構造を維持できているかを確認する必要があります。
3. 季節変動
季節的な売上変動は、多くの企業にとって避けられない要素です。繁忙期と閑散期の売上の差が大きい場合は、閑散期の収益低下が会社に与える影響を軽減する工夫が必要です。増分収益が増分費用を上回るような施策を行い、閑散期の影響を和らげる対応が求められます。
4. 市場の危険分散の度合
特定の顧客や市場に依存していると、そちらの業績やニーズの変化によって会社全体が影響を受けやすくなります。市場の多角化や顧客層の拡大などによりリスク分散を図ることで、業績の安定性を確保することが重要です。
5. 内外作区分
自社内での製造(内作)と外注(外作)のバランスを取ることは、企業のコスト効率とリスク管理において非常に重要です。外部への依存度が高いと、外注先のトラブルや価格変動が直ちに影響します。自社での生産能力を高めつつ、適切な範囲での外注も併用して柔軟性を持たせるべきです。
6. 支払手形の回転率
支払手形の回転率は、資金繰りの健全性を表す指標です。回転率が悪化すると資金の流れが滞り、キャッシュフローに影響が出ます。手形の管理を徹底し、適切な回転率を保つことで、資金管理の安全性を向上させることが必要です。
7. 賃率
賃率(労働分配率や人件費率)は、労働コストが企業に及ぼす影響を測る指標です。賃率が高すぎる場合はコスト過多によって利益が圧迫されるため、適切な労働コストの管理が重要です。賃率の最適化を図ることで収益性を高め、会社の安定性を確保します。
これらの分析によって、企業の安全性に対する潜在的なリスクを見つけ出し、適切な対応策を講じることが重要です。事業構造を強固にし、企業が持続的に成長できる基盤を築くために、社長は常にこれらのポイントを見直し、状況に応じた対策を柔軟に講じていくことが求められます。
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