企業経営において最初に取り組むべき問いは、「我が社の特色は何か」である。ここで言う特色とは、他社にはない独自の強みや価値のことだ。しかし、それが顧客にとっての価値でなければ意味がない。一方的な自負や思い込みは、市場で支持されない。
特色とは顧客の目に映る価値である
K社の事例が、このポイントを浮き彫りにする。ある洋菓子研究家を招いてアイスクリーム作りを依頼したところ、製品は甘すぎて市場で受け入れられなかった。彼は「これこそアイスクリーム」と自信満々だったが、顧客の嗜好とはかけ離れていたのだ。
この出来事が示しているのは、自社の特色は顧客に評価されて初めて価値を持つということだ。顧客が求めるものを理解せず、自分たちの価値観に固執していては、企業の強みも特色も絵に描いた餅にすぎない。
市場で評価される特色とは何か。それは、顧客のニーズや期待を深く理解し、それに応える形で生み出される強みである。その強みを見つけ出し、どのように活用するのかは経営者自身の決断次第だ。市場と顧客に寄り添い、自社の特色を最大限に発揮する道を選ぶことが、経営者としての責任である。
「我が社の欠陥は何か」を真摯に見つめる
次に問うべきは「自社の欠陥」である。しかし、この問いに対し「人材の不足」を安易に挙げるべきではない。人材の問題を掲げることは、現状の課題を他人任せにする態度に他ならない。企業が直面する真の欠陥は、常に事業構造そのものに潜んでいる。
事業構造の偏りというリスク
高度経済成長期には、多くの企業が「儲かる仕事」や「簡単な仕事」に依存し、事業構造が偏るケースが目立った。単一業界、単一商品、単一取引先に過度に依存した企業は、経済の減速や市場の変化に対応できず、競争力を失うリスクを抱えている。
この構造的な偏りを放置することは、経営を脆弱にする最大の原因となる。特に市場の動きが急激に変化する現代では、多角化や新事業の開拓を視野に入れ、構造の柔軟性を高めることが不可欠だ。
販売力の弱体化という落とし穴
もう一つの欠陥は「販売力の弱体化」である。高度成長期には、需要が溢れ、待っているだけで商品が売れる時代だった。この環境が「営業努力の怠慢」を招き、多くの企業が受け身の姿勢に陥った。そして競争環境が激化すると、販売力の弱さが一気に露呈し、経営の足かせとなる。
欠陥の発見には「顧客の声」に耳を傾けよ
事業構造や販売力の見直しは重要だが、企業自身が欠陥に気づくのは難しいものだ。最も確実に欠陥を見つけ出す手がかりは、顧客からの意見やクレームである。
顧客の声には、企業の弱点や改善点が如実に反映されている。そこに耳を傾け、謙虚に受け入れることで、自社の問題点が浮かび上がる。そして、改善に取り組むことで、顧客満足を高め、企業価値を向上させることができる。
自社の未来は「特色」と「欠陥」の理解から始まる
我が社の特色とは、顧客が支持する価値である。一方、欠陥は事業構造の歪みや販売力の弱体化に潜んでいる。これらを正確に把握し、対策を講じることが、持続的な成長への第一歩となる。
顧客の声に学び、自社の強みを最大限に活かしながら欠陥を改善する。そして、変化に適応する柔軟な経営を貫くことが、企業が未来へと歩み続けるための最大の鍵である。
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