目次
📜引用原文(日本語訳)
第七八偈
いかなる妄執も存在せず、悪の根の滅びてしまった修行僧は、こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』 第二章 第七八偈
🔍逐語訳と用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
妄執(upādāna) | 執着・取り込み・自我へのしがみつき。五取蘊(五つの取り込みの対象)などに対する固執。 |
悪の根(akusala-mūla) | 煩悩の根本たる三毒——貪(とん)・瞋(しん)・痴(ち)を意味する。 |
こなたの岸 | 現世的な存在・迷いの世界。生死輪廻の領域。 |
脱皮 | 成熟のプロセスとしての「捨てること」の象徴。古い自我からの脱却。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
すべての執着を滅し、
欲望・怒り・無知という三つの悪の根を断ち切った修行僧は、
この迷いと苦しみの世界を超えて、彼岸に至る。
その姿は、
成長の時を迎えて古い皮を脱ぎ捨てる蛇のように、
自然で、静かで、不可逆な自由である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、あらゆる「執着」からの解放こそが、悟りの本質であると説いています。
執着とは、「手放せない思い」「しがみつく感情」「自己イメージへの固執」であり、
それが苦しみの連鎖を生み出す「燃料」です。
そして、苦しみの根源を絶ったとき、人は言葉もなく自然に自由となる。
この教えは、単なる禁欲ではなく、「自由の技法」としての捨てる智慧を指しています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と実践 |
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執着しない成果志向 | 「成果にしがみつく」ことは、柔軟性と創造性を奪う。目標を持ちつつ、執着を手放すことで本来の実力が発揮される。 |
メンタルブロックの克服 | 恐れ・怒り・プライドなど「心の根」にある反応パターンを見つめ、意識して脱ぎ捨てることが、ビジネス上の突破口になる。 |
離職や転機での再構築 | キャリアや肩書に固執せず、しなやかに自己を再定義する力が、時代変化への適応力を高める。 |
人間関係の成熟 | 固定観念や他人への「こうあるべき」という執着を捨てることで、信頼と対話の質が劇的に高まる。 |
✅心得まとめ
「執着を捨てたとき、自由は向こうからやってくる」
わたしたちは、
成功へのこだわり
評価への渇望
正しさへの固執
「自分とはこうあるべき」という思念――
そうした「妄執」の網に絡めとられている。
だが、それらを静かに脱ぎ捨てたとき、
本当の自分、本当の自由、本当の創造が現れる。
それは「努力の結果」ではなく、
妄執の不在という状態そのものである。
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